相続時の「不動産共有」で招いた思わぬトラブル
平等な相続を意識して不動産を安易に「共有」してしまうと、のちに不動産を思うように売却できない事態になることも…。平等な不動産共有だけど売却時に思わぬ苦労が起こってしまった事例を見ていきましょう。一美さんの父は、老後に不動産投資を行い、その収益と年金で生計を立てていました。
家族の共有財産として不動産を管理
複数の物件を所有しており、それぞれに物件自体の金額や収益率も異なっています。この父が亡くなったとき、一美さんと妹、そして母が相続人となって遺産分割をすることになりました。
家族仲はよかったので、もめたりすることもなく、預貯金などは法定相続分通りに分けるという話になりました。しかし、問題となったのが、父が所有していた数多くの不動産物件です。
条件が異なるいくつもの物件を等しく分けるのは困難で、登記などの手続きも面倒そうでした。困った一美さんが司法書士に相談したところ、家族間でトラブルの心配がないなら、すべてを共有として管理すればいいとアドバイスを受けたのです。
確かに、これならだれかが損することもなく全員で利益を分配することができます。そこで、一美さんは家族の共有財産として、不動産を管理することになったのです。
不動産共有は管理費用を全員が出す
しかし、相続から数年がたったころ、物件も少しずつ劣化が進み、修繕が必要なところが出てきました。物件は共有なので、維持・管理の費用は全員が出さなければいけません。
しかし、妹は子どもが大学に進学し、それに伴ってひとり暮らしを始めたこともあって、すぐには維持費を捻出できないとのことで、その分は一美さんが立て替えることになりました。
さらにまずいことに、父が亡くなってから、母は急にもの忘れが激しくなり、一美さんと妹は認知症ではないかと心配しています。もしも所有者のひとりが認知症になってしまうと、その財産には手を付けることもできません。
そうなる前に一美さんが所有権を譲り受けようかとも考えているのですが、そのためには持ち分を買う必要があり、費用的にも難しいため、悩んでしまっています。