不在者財産管理人の家庭裁判所での選出手続き
亡くなった父親に、兄弟には顔もみたことがない兄がいて、その兄の息子が相続人としての権利を持っているということが判明。「相続の手続きを行っていること」を手紙で伝えても返信が一切ありません。不在者財産管理人を立てて、遺産分割協議を行うまでの流れを見ていきましょう。
不在者財産管理人を代理として立てる
姉は「このままでは相続に手を付けることができないから、この人は無視して遺産分割を進めてしまおう」と主張しましたが、それは法律上できないことだからと、司法書士から止められてしまいました。
いつまでたっても返信はなく、このままではどうにもできないということで、家庭裁判所に相談することになりました。そこでいわれたのは、遺産分割協議を行うにあたって相続人がいないということなら、その人物の代理を立てるしかないということでした。
この代理人を不在者財産管理人といい、これを立てるには、家庭裁判所で選出手続きを行わなければなりません。そこで孝史さんたち兄弟は家庭裁判所で申し立てて専門家を選出。甥が受け取るはずの遺産を預けることになりました。
不在者財産管理人に設けられた制限
代理人を立てれば、あとは残った相続人で遺産分割協議を行うだけだと思ったのですが、じつはこの場合にはある制限が設けられています。それは、不在者財産管理人に預ける財産は、法定相続分より多くなければならないということです。
孝史さんのケースでは、父が残してくれた財産の4分の1は、見ず知らずの甥のものとして預けておかなければならなくなったのです。また、専門家への依頼ということで、10万円ほどではありますが管理費用がかかってしまうことになりました。
その後、彼ら姉弟は残った財産を3等分しました。父の残した言葉通り、兄弟間でトラブルが生まれたり不仲になったりするような事態は避けられたのですが、不要な費用がかかったり取得分が4分の1になったりと、兄弟そろって納得のいかない結果になってしまったのです。