介護を任せていた姉に不当利得返還請求した事例
認知症患者の介護や財産管理をひとりに任せていると、相続の前に思わぬ争いを生んでしまうこともあります。母の介護をしていた長女が財産を使い込んでいた事例を見ていきましょう。現在60歳の祐太さんには、姉がひとりいます。父は15年ほど前に亡くなっており、それ以降は、姉が残された母を引き取って、サポートしています。
不審に思い銀行預金の取引履歴を調べた
ところが、母は5年ほど前に認知症を発症。それでも姉は在宅サービスなどを利用して介護を続けていました。しかし、その母も85歳という天寿を全うし、ついに帰らぬ人に。祐太さんと姉は葬儀を行い、その後の手続きも滞りなく済ませました。そこで祐太さんは姉に「相続の件はどうしようか」と切り出したのです。
祐太さんは、介護を任せてしまっていた分、姉には多めに相続してもらうつもりでいました。しかし、姉から返ってきたのは「相続しようにも、母の蓄えなんてもうほとんど残っていないよ」という言葉でした。
母は、父が亡くなったタイミングで実家も売却し、残された財産も配偶者控除を利用しつつ相続していました。そのため、貯蓄は合計で5000万円近くあったはずです。いくら認知症介護にお金がかかるとはいえ、介護保険などを利用していれば、蓄えがほとんどないということはあり得ません。
祐太さんはそのことを指摘したのですが、姉は変わらず「残っていない」の一点張り。祐太さんが不審に思い、銀行預金の取引履歴を調べたところ、数十万円単位の高額過ぎる取引が何度も行われていることが明らかになりました。
相続請求を拒否され不当利得返還請求
この事実を知った祐太さんは我慢できず、調査結果を姉に突きつけて「親の金を預かっている身で、勝手に使い込んだんだろう。これでは横領じゃないか!」と詰め寄りました。
ところが姉は逆上し、「いままで介護をわたしに任せてほったらかしだったクセに、偉そうなことをいわないで! わたしが母さんから預かって管理してたんだから自由に使う権利がある!」といいだしたのです。
当然、祐太さんは納得できず、遺産として自身の相続財産を請求。姉はこれを拒否しました。そこで、家庭裁判所に相談した結果、不当利得返還請求を行うことになったのです。
祐太さんは事前に知り合いの司法書士を通じて銀行の取引履歴を調べ、証拠が手元に揃っていたため、すぐに訴えを起こすことができました。そしてその結果、祐太さんの要求が通り、姉に対して法的な請求を行うことになったのです。