中高齢寡婦加算は子どものいない妻の支えになる
遺族基礎年金は子どもがいない配偶者には受け取れないものになっています。仮に子どもがいても、18歳を超えれば支給は停止。配偶者への給付に空白が生まれてしまいます。そんなときに配偶者の助けになるのが、中高齢寡婦加算なのです。中高齢寡婦加算の制度について詳しく見ていきましょう。
中高齢寡婦加算の受給対象となる条件
中高齢寡婦加算の受給対象となる配偶者には、いくつかの条件が課せられています。まず、故人が厚生年金に加入しており、規定の期間以上厚生年金保険料を支払って、老齢厚生年金の受給資格を持っていたことです。
そしてその配偶者が、亡くなった夫によって生計を維持されており、亡くなった時点で40歳以上65歳未満でなければいけません。受給していたとしても、配偶者が65歳を迎えて老齢基礎年金の受給が始まると、その時点で中高齢寡婦加算の支給は停止されます。
また、夫が亡くなった当初、子どもがいたために遺族基礎年金を受け取っていた場合には、中高齢寡婦加算は支給されません。しかし、子どもが18歳になって最初の3月31日を迎え、遺族基礎年金が停止されると、支給対象になります。子どもがおらず、遺族基礎年金が受けられない場合でも、同様に支給対象です。
中高齢寡婦加算の支給額は上乗せ
中高齢寡婦加算の支給額は遺族基礎年金の4分の3。2018年なら、年額58万4500円です。文字通り厚生年金に対する「加算」になるため、遺族厚生年金と一緒に、上乗せするかたちで支給されます。
ただし、たとえば夫が亡くなった時点で18歳未満の子どもがおり、配偶者が遺族基礎年金を受け取っていた場合、そのまま子どもが18歳を迎え、遺族基礎年金が停止されたとしても中高齢寡婦加算が受けられないケースがあります。それは、その時点で配偶者が40歳未満だった場合です。
この場合は、配偶者もまだ働けるという判断になるため、支給されないのです。この制度はほかの年金との関係で少々条件が複雑なので、なにか疑問があるときには年金事務所などで確認しておくと確実です。
配偶者が65歳になれば支給が停止されると書きましたが、1956年4月1日以前に生まれた配偶者に関してはその限りではありません。中高齢寡婦加算よりは金額が下がりますが、65歳以降も、経過的寡婦加算を受給できます。
これは夫が亡くなった時点で65歳を超えていた配偶者も同様。中高齢寡婦加算を受け取ることなく65歳を迎えていたとしても、経過的寡婦加算は受給可能です。この制度は、生年月日によって起こる老齢基礎年金受給額の差などを補填するためのものなので、中高齢寡婦加算とは別に受け取ることができます。
中高齢寡婦加算と経過的寡婦加算
経過的寡婦加算の支給額は、中高齢寡婦加算の58万4000円から、妻の老齢基礎年金の金額に生年月日に応じて定められている乗率をかけた金額を差し引くことで算出されます。最高額になるのは1927年4月1日以前に生まれた人。乗率が0なので、58万4000円そのままの支払いになります。
一方、たとえば2019年の1月1日時点で65歳を迎える、1954年1月1日生まれの人は、乗率が480分の324。加算額は5万8472円になります。これらの乗率については1年単位で細かく決められているので、対象になっている人は厚生年金のウェブサイトなどで確認しておきましょう。
なお、これらの加算に対して、特別な手続きなどは必要ありません。さきほども書いたように、すでに支給されている遺族厚生年金への加算として振り込まれるため、最初の遺族厚生年金の請求手続きを問題なく済ませていれば個別の届け出は不要です。すでに伝えられている条件などから、自動的に加算や切り替えが行われます。
もし振り込まれている金額などに疑問がある場合には、その都度、年金事務所などに相談にいくことをおすすめします。