事業承継では頼りになる「特例」を活用する
株式を相続し、事業承継を行う場合には、課税額が大きくなってしまうことが少なくありません。中小企業であっても、多くの資産を所有し、高い純資産価額や大きな利益によって、評価額が高くなってしまう場合があるのです。そのような場合のために、サポートとなってくれる税制上の特例や支援する法律などがいくつか定められています。
事業承継による相続税や贈与税を猶予
事業承継に使える特例の代表例が「納税猶予」です。これは、事業を承継した後継人の相続税や贈与税の納税を、一定期間猶予してくれるというもの。中小企業であっても、持ち株会社の株式を贈与された場合には株式評価額が高くなり、贈与や相続による税金が高額になってしまう場合が多くあります。
そのようなケースのために、一定の割合まで納税の猶予制度が設けられているのです。現経営者から自社株を相続、または遺贈された場合には、後継者が取得した株式の80%分の相続税の納税が猶予されます。贈与税の場合には、全額猶予が受けられます。
とはいえ、この制度にもいくつかの条件があります。まず、継承される会社について。この会社は、中小規模の会社であり、かつ上場企業や風俗営業を行う会社ではないこと。そして、従業員がひとり以上はいること。資産運営会社に該当しないことの4つです。
ちなみに、資産運営会社とは、つねに従業員が5人以上いるなどの要件を満たさず、かつ資産の7割以上が事業用に運用されない資産の会社や、総収入額のうち、事業用以外の資産の運用収入が75%以上ある会社をいいます。
事業継承に使える特例には条件がある
さらに、被相続人にあたる経営者には以下の条件が課せられています。まず、その経営者が会社の代表者であったこと。また、相続開始の段階で、経営者と親族が半数以上の議決件数を持ち、そのうちの筆頭株主がこの経営者であることなどです。贈与税について申請を行うならば、その時点で役員を退任していることも条件になります。
最後に、この会社を承継する後継人の条件。この人物は、被相続人にあたる経営者の親族でなくてはなりません。また、相続の場合は、相続開始前に役員であること、贈与の場合は贈与以前に3年以上にわたって役員を務めていたことが求められます。
また、相続の場合、相続が開始されてから5カ月後には代表者となっていなければなりません。そして最後に、相続が開始された時点で、後継者とその親族で議決件数の半数を所有していること、そのうちの筆頭株主が後継者であることも条件となっています。