葬儀費用支払い「口座凍結」大慌てトラブル事例
母親が亡くなったとき、山下さんは、葬儀は簡単に済まそうと考えました。ずっと前に亡くなった父親は議員で地元の名士でしたが、母は普通の主婦だったからです。葬儀も父親のときと比べ、数分の一規模ですませ、いざ、かかった費用を亡母の銀行口座から精算しようとしたときに、問題が明らかになりました。
口座凍結で自分の定期預金を解約した
「一般人のことだから、こちらから知らせなければわからないだろう」そんな風に考えていた山下さんでしたが、母は亡父の資産の大部分を受け継いでいたことに加え、元議員夫人として地元に知り合いも多く、銀行へも情報が伝わっているようで、口座は凍結されていました。
小ぶりに済ませたとはいえ、生前のつき合いや親戚も多く菩提寺への分も合わせると、葬儀関係で支払わなければならない金額は数百万円になっていました。時間がなかったこともあり、山下さんはとりいそぎ自分の定期預金を解約して支払いにあてなければならなくなったのです。
一人っ子の山下さんは、「相続人といっても自分だけ」という思いもあって甘く考えてしまったのでした。もちろん、相続人が確定するまでは故人の資産に手を付けてはならないのは当然。葬儀費用は一旦立替えなどして、相続の時点で相殺するというのが普通なのです。
口座凍結でも葬儀費用は引き出せる
いろいろな手続きを済ませ、無事、母親の預金を相続することになった山下さんは、必要書類を整えて銀行へと出向きました。その際、担当者相手に、軽率だった自分の失敗を話したところ、意外な事実を知ることになりました。
「金融機関ごとに必要な手続きは異なりますが、葬儀費用に関しては書類の提出などで引き出せます。当行では死亡直前の入院費などについても同じです」そう教えてくれた担当者は、手続き自体も相続による凍結解除よりずっと簡単だと説明してくれたのです。
「口座凍結」になるとどんな場合でも引き出せないと考えて、結局、山下さんはかえっていろいろと手間のかかることを増やしてしまう結果になってしまったのです。