古代祐三がキラスタDXに提供した曲の作り方
『イース』『ソーサリアン』『アクトレイザー』『世界樹の迷宮』など数々の名作でサウンドを担当し、高度な技術力と深い音楽性で圧倒的な人気を誇るゲーム音楽家・古代祐三さん。『キラスタDX』には古代さんも参加。そこでRIKI がインタビューを敢行し、開発秘話をマニアックに聞き出しました。
古代祐三がキラスタDXに曲を作った
RIKI 『キラスタDX』では、「LV2 STAGE5」の曲を作っていただきました。この楽曲は、『イース』とかが大好きだった40 代くらいの大人に向けて作られているように感じます。
古代 まさにそうです。
RIKI うれしかったですね。昔の作風に戻すというのは、簡単にできるものなんでしょうか?
古代 私は完全に独学だから、当時の方法をトレースすれば自然とそういう風にできるんですよね。
RIKI すごく懐かしいのに、既存のどの曲にも似てないところにも驚きました。どうやったら、そんなことができるんでしょう?
古代 手札がいろいろあって、それを組み合わせているんです。例えばベースラインは、『The GG 忍』(1991 年)に近いです。それをファミコン風に変えていくことで、独自性を出していたんですよ。
古代祐三の完全にレトロな作り方
RIKI なるほど! ゲームギアの音源は、3音+ノイズでファミコン音源(3音+ DPCM +ノイズ)に近いですよね。音数の少なさで苦労したりはしませんでしたか?
古代 それは全くありません。もともと「ファミコンの音楽を作ろう」と思って進めていましたから。
RIKI 『キラスタDX』では、効果音が鳴ると2トラック目が消える仕様です。古代さんの曲は、効果音で一部が途切れても違和感なく、気持ちよくプレイできるようになっているのに驚きました。
古代 完全にレトロな、ファミコンが出て1~2年くらいの作り方をしているんです。波形も音符もシンプルな使い方になっているから、一部が抜けても不自然になりにくいんだと思います。「当時のままのクラシカルな作り方」というのがコンセプトにあって、それに忠実に作ろうという。
古代祐三が選んだコンセプトとは
RIKI そういったコンセプトを選ばれたのは、どうしてでしょうか?
古代 この作品に私が参加するとなったとき、期待されるのはそういうサウンドだと思ったんですよ。じゃあ、期待通りに作ろうと。あまりにぶっ飛んだことをやってもね、ノスタルジックなものを感じないだろうと。
RIKI 古代さんの曲は、MML がすごくすっきりしているのも不思議でした。それでいて、5トラックがどハデに鳴っていて、しっかり聴きごたえがあります。
古代 かなり初期に戻って、当時のように作ったものなので、プレイヤーも当時の感性が蘇って……変な言い方ですが、良く聴こえちゃうところはあると思うんですよ。思い出が呼び覚まされて、「あ、いいな」って思っちゃうんじゃないかな。打ち込みもあえて当時のままの感じでやっているので、MML がシンプルなんです。