世帯主が死亡したときは団信に入っているか確認
団体信用生命保険が適用されるのは、住宅ローンの返済が残っている場合のみ。もしほかの方法でローンを返済してしまったら? 団信はあくまで住宅ローン返済のためのもの。団信の存在に気付かなかったというだけで、じつに3000万円もの損失を生んでしまった事例を見ていきましょう。
保険金を取得して住宅ローンを返済
専業主婦のHさんは、35年で完済の住宅ローンで、約25年前に一戸建てを購入。子どもはひとり暮らしをしており、夫とふたりで暮らしていました。
しかしある日、夫が急な病気に倒れ、亡くなってしまいます。当時、Hさんは50歳。子どものひとりは大学生で、残り数年ですが学費もかかり、住宅ローンもあと10年も残っている状況です。
一通り財産などの整理や葬儀などの手続きが終わったところで遺族年金などの給付金について調べてみたものの、このままでは住宅ローンも払えないとわかり、Hさんは途方に暮れていました。
しかしそんなとき、夫が加入していた死亡保険を思い出しました。その保険金があれば住宅ローンも全額返済することができます。しかし、急な逝去だったこともあり、すっかり失念していたのです。
そこで、Hさんは急いでその保険の担当者に連絡。死亡保険受給の手続きを行いました。その結果、3000万円の保険金を取得し、それまでの貯蓄の一部と合わせることで、どうにか住宅ローンを返済することができたのです。
団信の加入者票が遺品から出てきた
しかしその後、衝撃的な事実が判明します。家のなかの夫の遺品などを整理しつつ、今後の保険はどうしようかと考えていたところ、遺品のなかから、団体信用生命保険の加入者票が出てきたのです。
団体信用生命保険とは、住宅ローン専用の生命保険。これに加入していれば、契約者が亡くなった時点で残ったローンは、生命保険金から返済されるため、残りは払い込みが免除されます。
たいていの場合、自宅を購入する際にこの保険への加入が義務付けられており、もしものことがあっても住宅ローンの返済については心配せずに済むはずだったのです。ただし、この保険はあくまで住宅ローン返済のためのもの。一般的な死亡保険のように、保険金を受け取って生活費に充てたりすることはできません。
Hさんが死亡保険金で住宅ローンを返済してしまった時点で、団体信用生命保険は無意味なものに。この保険のことを知らなかったというだけで、じつに3000万円もの損失を生んでしまったのです。