在職老齢年金は60歳以降も働き続けるともらえる
定年を迎えたとしても、そのまま退職して悠々とした老後生活を送れるという人は決して多くはありません。老齢基礎年金の受給開始が65歳からになっている以上、貯蓄が十分でなければ、働き続けないと安定した老後の生活を送るのは困難だといえます。そこで、在職老齢年金の仕組みを見ていきましょう。
在職老齢年金は調整で支給額が減額
まず、在職老齢年金とは文字通り職に就いたまま受け取る老齢年金のことです。年金と総報酬月額相当額の合計が一定金額以上になると適用され、調整によって年金の支給額が減額されます。
なお、総報酬月額相当額とは、標準報酬月額と直近1年間の賞与額の12分の1に相当します。標準報酬月額とは、その年の4月~6月に支払われた給与の平均です。
減額割合は、年金の基本月額と総報酬月額相当額によって、それぞれ47万円と28万円を基準に決められます。自分の場合がどれに該当するのか、事前に確認しておかなければいけません。
なお、65歳を超えて働く場合には比較的減額は少なくなります。無理は禁物ですが、可能な限り働けるようにした方が、老後の生活がより盤石なものになるでしょう。
在職老齢年金の支給額がゼロになる
また、実際に計算をしてみればわかるかと思いますが、総報酬月額相当額が一定以上になると、基本月額よりも減額分の方が多くなり、在職老齢年金の支給額はゼロになってしまいます。そうなれば、全額支給停止扱いです。基本月額が少ない人ほど、この条件に関しては注意しなければいけません。
また、在職老齢年金の制度を受ける場合、年金受給者は同時に厚生年金の被保険者でもあるため、給与に応じて保険料も年金から天引きされます。たしかに、貯蓄が十分でなければ、老後も老齢基礎年金の受給開始までは働き続ける必要が出てくることになるのですが、こういった金額をそれぞれ確認しておくことも重要です。
働いた期間やそれによって得られる報酬が少しでも無駄にならないように、定年を迎えた老後にこそ注意して働き方を考えなければいけません。
在職老齢年金が全額支給されるケース
働きながらも在職老齢年金の全額支給を受けられるケースのひとつが、再就職先で厚生年金に加入しない場合です。基本的にはすべての会社が厚生年金に加入しなければいけないのですが、従業員が5人以下の小規模企業はその限りではありません。
在職老齢年金は厚生年金加入者に対する制度なので、このような会社に再就職すれば適用外になるわけです。また、勤務時間が正社員の4分の3未満であれば厚生年金の加入対象者からは外れます。
なお、2017年の制度改正で、週20時間以上の勤務、月給8万8000円以上継続して1年以上勤務しているなどの条件をすべて満たした場合にも社会保険の対象に含まれることになりました。勤務先と相談し、これらの条件を避けるかたちで勤めることができれば、年金は満額受給可能になるのです。