失踪は7年で死亡扱いになり死亡保障の対象に
生命保険の被保険者が思わぬ事態で行方不明に。死亡判定も降りないため、生命保険金も受け取れないときにはどうするべきなのでしょうか。じつは、失踪は7年たてば死亡扱いになり死亡保障の対象になるのです。そのために、解約せずに保険料を支払い続けるという選択肢もあり得るという事例を見ていきましょう。
行方不明では死亡扱いにはならない
40代半ばで共働きのSさんとその夫の夫婦は、夫を被保険者、Sさんを受取人として生命保険に加入していました。子どももすでに独立しており、老後への備えを考えていたそうです。
しかしある日、大きな台風でSさん宅の近所を流れる川が増水。近くに住む夫の両親の田畑が心配だということで、夫はその様子をみに行ったきり、帰ってきません。増水した川に飲み込まれたのかもしれないということで捜索が行われましたが、結局夫の居場所はわからず、そのまま行方不明扱いになってしまいました。
Sさんは生命保険の保険金が受け取れるのではないかと保険会社に連絡。しかし行方不明では死亡扱いにはならず、結局、生命保険の保険金は受け取ることができませんでした。
そのため、彼女はひとりで子どもを育てていかなければならなくなりました。そうなると、生命保険の保険料の負担はとても重くなります。これからの生活を考え、わずかでも返戻金が出るならと、そのまま保険を解約しようと考えて、保険アドバイザーに相談しました。
保険料よりもずっと高額の保険金を受給
ところが、保険アドバイザーは、どうしても生計を立てられなければやむを得ないけれど、できればあと7年は保険を維持した方がいいといいます。
その理由は、失踪宣言という法的な制度にありました。これは、行方不明になってから7年以上連絡が取れなくなった人については、失踪宣言ということで死亡したものと同じ扱いになるという決まりです。
水害などの大規模災害で行方不明になったという確証があれば、この宣言は行方不明になって1年で出せるのですが、今回はそれが本当に水害によるものかどうかが不確定だったため、7年かかることになりました。
Sさんは、結局この期間契約を継続し、3000万円の生命保険金を受給したのです。夫を喪ってしまいましたが、支払ってきた保険料よりもずっと高額の保険金を受給し、その資金で立派に子どもを育て上げることができました。