「家族信託」で認知症の相続トラブルを事前回避
もしこのまま義母が認知症を発症してしまったら、介護費用を義母の口座から引き出すことができなくなってしまいます。また、義母はホームから度々一時帰宅するのですが、今の自宅はバリアフリーなどもなく不自由です。これを解消するにもリフォームや引っ越しなどで高額の費用がかかります。
家族信託は契約書で家族が財産管理
不安になった明子さんが認知症になったときの財産の管理などについて調べてみたところ、認知症になると成年後見人を立てて財産を管理することになるとわかりました。しかし、家庭裁判所の選任を受けた人が、最低限の管理をするだけだとのこと。後見人を立てることになると、結局財産には手が出せなくなるかもしれません。
さらに認知症対策について調べていると、家族信託という方法が出てきました。家族信託は、所有者が認知症になっても、契約書に基づいて家族が財産を管理できる方法とのこと。自分のケースにも合っていそうだと感じたので、明子さんは無料相談を受けている司法書士を訪ねました。
そこでいわれたのは、放っておいたら明子さんの考えていたとおり、家族でも財産に手が出せなくなるということでした。認知症になった人の財産管理に関する対策法はいくつかありますが、どれも認知症になったあとでは、手続きをすることができないというのです。
家族信託の受託者を義兄に設定した
そして、家族信託を使って備えておけば、認知症になってからの財産管理に義母の希望を反映でき、加えて、贈与税もかけることなく自宅の管理権だけを家族が受け取れるということがわかりました。
明子さんはこれを聞いて夫や義母と相談。思ったほど費用もかからず、司法書士に頼めば手続きは任せられるとわかったため、すぐに依頼することになりました。
受託者を義兄に設定しているため、明子さん夫婦が自分たちのために財産を利用したりしていると、兄嫁から勘繰られる心配もありません。こうして、明子さん一家は全員が納得できるかたちで無事に相続までを乗り切ることができたのです。