相続税納付の負担を軽くする制度「延納と物納」
相続税は、相続人たち全員の間で連帯納付義務が発生します。もし相続人の誰かが納付期限を過ぎても未納のままだった場合は、その連絡がほかの相続人に届き、代わりに納税するように求められることがあります。最悪の場合、相続人のひとりが相続財産だけを受け取り、納税義務は人になすりつけていなくなることもありえるわけです。このような事態を避けるためにも、相続税の納付には負担を軽くする制度が設けられています。
基本的に物納より延納が優先的に適用
相続税の納付期限は相続の開始を知ってから10カ月以内。相続人は、それまでに財産の整理や相続人の確定、税額の計算などを済ませて申告と納付に進まなければいけません。
仮に申告を期限内に行っていても、納税が期限より遅くなった場合は、追加で税金が課せられてしまいます。これを避けるための手段のひとつが、延納と物納です。
延納は、税金を分割で納付していく方法で、ほかの税金でも認められている制度。一方の物納は、一定の価値が認められている財産を金銭の代わりとして納める方法です。
基本的には延納が優先的に適用され、それでも納付が難しい場合に物納を選択します。延納は納税額が10万円を超えており、納付が困難で、代わりに担保を用意できることが条件です。これを満たせば、5年~20年まで期限を延ばすことができます。
物納は延納でも現金納付が難しい場合
一方の物納は、延納でも現金納付が難しく、国内に物納できる財産を所有していることが条件。つまり、定職に就いており、定期的に納税にするだけの収入があると判断されれば、物納申請は難しくなります。さらに、いくら価値があったとしても、管理処分不適格財産であれば、納税に使用できません。
管理処分不適格財産とは、所有者や管理者資格を明確に持っていない財産のこと。抵当権が付されている不動産、所有権が不明瞭な不動産、境界について争いになっている不動産、耐用年数を超過していたり、使用が困難な問題がある不動産などです。
また、株式などであっても、共相続税の納付有財産となっている場合には、全員が物納申請を行わなければ、利用することはできません。