時効取得の成立を目指すことになった相続登記例
遺産分割協議を行わずに土地の名義をそのままにしていると、次の代で思わぬトラブルに発展してしまうことがあります。土地の名義が祖父のままにしておいたがために、ネズミ算式に関係者が増えてしまった事例を見ていきましょう。結局、遺産分割による相続登記を諦めて、時効取得の成立を目指すことになったのです。
遺産分割協議が行われていなかった
母の死に際して相続を行った健太さん。彼はひとりっ子で、実家で暮らしていました。数年前に父が亡くなった際に預貯金はすべて相続していたので、財産はほぼ自宅の土地のみ。相続についてはまったく心配していませんでした。
しかし、蓋を開けてみると思わぬ問題が立ち上がります。健太さんが受け継いだ自宅は、古くからある先祖代々の家だったのですが、なんと現在の所有者は、健太さんの母でも先に亡くなった父でもなく、健太さんの父方の祖父であることが発覚したのです。
司法書士に依頼し、詳しく調べてもらったところ、およそ50年前、健太さんの祖父が亡くなったとき、遺産分割協議が行われていなかったとわかりました。
時効取得の成立を目指すことになった
当時の相続人は、父とその叔父と叔母、さらに祖母の合計4人です。しかし、彼らはすでに亡くなっており、相続権はすでにその子ども、健太さんの従兄弟たちに移っていたのです。
これらの相続人をすべて数えると、かなりの数になってしまいました。しかも、健太さんは半分以上が面識もなく、連絡先もわかりません。司法書士も、従兄弟たちに相続権が移っているだろうと調べたところで全員と連絡をとって遺産分割協議をするのは難しく、これ以上は手が出せないといっています。
健太さんは結局、遺産分割によって相続登記をすることを諦めました。そして司法書士の助言に従い「平穏かつ公然と他人の物を一定期間占有する」ことで所有権を獲得できる、時効取得の成立を目指すことになったのです。