生前贈与の代表格「暦年贈与」のメリットとは?
被相続人が亡くなると、残された遺族はさまざまな面で苦労することになります。届出や葬儀など、手続きは多く、かかる費用も高額です。費用についてはできる限り抑えたいと考えるのが普通でしょう。なかでも、相続税の節税対策は、早くから準備をすることで、その効果は大きくなります。不動産や預貯金がある場合は、相続税が発生するのかどうか、早いうちに確認しましょう。
暦年贈与は毎年少しずつ財産を移す
被相続人が先を見通して準備しておけば、相続税は大きく抑えることができます。そのための方法の筆頭ともいえるのが「生前贈与」です。これには暦年課税と相続時精算課税の2種類があります。ここでは、それぞれの方法といかにして相続税額を抑えるのかについて解説します。
まずは暦年贈与について。相続税と贈与税の税率は、贈与税の方が高額です。それでは、なぜ贈与することで税額を抑えることができるのでしょうか。それは、贈与の場合は毎年少しずつ財産を移していくことができるからです。
相続は被相続人が亡くなった時点で、その所有財産がすべて、強制的に相続財産扱いになりますが、贈与は望んだ額の財産だけを渡すことができます。贈与税も相続税も、財産の価額に応じて税率が変わる累進課税なので、移動する額が小さければそれだけ税率も下がるのです。
暦年贈与はワつ相手を自由に選べる
贈与税の基本的な計算の方法は、相続税と同様。移動する財産の価額から基礎控除額を差し引き、その残りに税率をかけ、控除額分を引くだけです。つまり、基礎控除額以下の財産が動くだけなら、基本的に無課税になります。
この控除額は年間110万円。この金額より少額の財産を毎年贈与するだけで、税金をかけずに財産を渡すことができるわけです。
110万円以上の額を渡す場合、注意しなければいけないのは、税率が2種類あるということ。親から子ども、祖父母から孫への贈与で、贈与を受け取る子どもや孫がその年の1月1日時点で20歳未満なら特例税率という税率が課せられ、それ以上なら一般税率になります。一般税率の方が高いので、もし甥や姪を相手に高額の贈与を行う場合は、税率に注意しなければいけません。
また、渡す相手を自由に選ぶことができるのも暦年贈与のメリットです。相続のように遺言書を残さずとも、被相続人が自身の意思で相手を選んで受け渡すことができるので、相続人による遺産分割のようなトラブルの心配はありません。
とはいえ、暦年贈与を行ってから3年以内に贈与者が亡くなった場合は、その財産は相続財産扱いになるので要注意です。