相続は配偶者と法定相続人にしか認めらない
新司さんが相続の件で悩んでいるのは、血のつながらない妹の千秋さんのことです。ふたりは新司さん10歳、千秋さん8歳のときから家族として育てられてきました。千秋さんの父と新司さんの母がそれぞれ以前の連れ添いを亡くして、再婚したのです。しかも問題を複雑にしているのは、新司さんが千秋さんの父の養子になったことです。
法律上はアカの他人で法定相続人でない
ただし、その理由は親子で名字が違うのはかわいそうだからだったといいます。そのため、結局、千秋さんの方は母の養子にはなっていません。
その状況が面倒な事態を生んだのは、相続が発生したときでした。まず父が亡くなった際、その遺産は母が2分の1を受け取り、新司さんと千秋さんで4分の1ずつを分けました。
もっとも、一家が暮らしていた家はもとは新司さんの実のお父さんが建てた家で、名義もお母さんのものだったのでその相続には関係なかったのです。ところが今度は、まだそれほどの年齢でもなかった母が、養父の後を追うように亡くなったのでした。
そこで問題になってきたのが、遺産相続をどうするかです。20年以上、母娘として過ごしてきたとはいえ、法律上は亡母と千秋さんはアカの他人です。つまり、その相続人は新司さんだけということになります。
相続は配偶者と法定相続人に認められる
ただし、新司さんの方では千秋さんのお父さんの遺産も(新司さんの養父でもあったので)相続しています。法律上はどうなっているかには関係なく、実質として母娘として育ってきた千秋さんにも母の遺産を受け継がせたい、それが新司さんの本当の気持ちでした。
もし、母が遺言状でそのような指示をしていれば問題はなかったのですが、いまとなってはどうしようもありません。
相続は配偶者と法定相続人にしか認めらないのです。また、法定相続人以外にも、財産を遺贈することは可能とはいえ、そのためには故人の意志をしっかりと示すための遺言書などが必要になります。新司さんの気持ちとは逆に、千秋さんに亡母の資産は渡すのは簡単ではありませんでした。