民法大改正の「特別受益の持ち戻し」の回避とは
今回の民法改正には、少子高齢化から発生するトラブルを予防・解決する各種施策が取り込まれました。なかでも大きいポイントが配偶者の権利の保護です。具体的には、配偶者を対象とした自宅居住権の保護や自宅贈与への優遇が挙げられます。ここでは、自宅贈与への優遇「特別受益制度」を見ていきましょう。
特別受益は生前にわたされた贈与財産
配偶者の住居については、さらに特別受益制度でも保護が強められる傾向になりました。特別受益とは、生前に被相続人から相続人にわたされていた贈与財産のこと。本来、相続発生時点でほかの財産と合算し、分割が平等になるように分けなければいけません。
このように贈与を相続財産に戻して合算するのが「特別受益の持ち戻し」です。これは多額の贈与を受けていた相続人と、それ以外の相続人との権利のバランスをとるための制度になります。
従来から、持ち戻しは遺言など被相続人の指示で免除することが可能でした。贈与時点で書面などを作成するか、遺言書に記載があれば持ち戻しは不要になります。相続の大原則では被相続人の意思が最優先されるのがその理由です。
特別受益の持ち戻し回避の優遇条件
今回の民法改正では、配偶者に対して特別受益の持ち戻し回避の優遇条件が加わりました。具体的には、婚姻期間20年以上の夫婦間であれば、居住用不動産の贈与は持ち戻しが適用されないと決まったのです。いうまでもなく、長く連れ添った配偶者への配慮ということになります。
不動産は相続における親族間トラブルの大きな要因です。配偶者居住権の創設や特別受益の持ち戻しの回避は、トラブルの結果、配偶者の生活が脅かされるというリスクを抑えるための施策であるのは間違いありません。
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