生前贈与の不平等を特別受益の持ち戻しで解決
生前贈与の不平等を指摘されトラブルに発展したときは、特別受益分を考慮して遺産分割を進め、解決を目指しましょう。兄弟間の生前贈与の不平等を特別受益の持ち戻しで解決した事例を紹介しましょう。昌一さんには7歳下の妹がいます。かなり晩婚だったため、妹が生まれたころには、すでに両親とも40代でした。
マンションの購入費用まで両親が援助
女の子だったということもあったのか、妹は昔から甘やかされてきました。ちょっとしたお小遣いやわがままも許されていたのです。
両親の妹への扱いは、彼女が成人してからも変わっておらず、大学の入学資金や学費、結婚資金や車の購入費用、挙げ句の果てに、妹夫婦が暮らすマンションの購入費用まで、両親が援助していました。
昌一さんも大学の入学金などは両親に出してもらっていましたが、学費もバイト代で払っており、それ以降も両親から援助らしい援助は受けていません。
昌一さんから妹の待遇について両親に文句をいったこともありましたが、「別にひいきしているつもりはない」としかいわれませんでした。その場では引き下がったものの、昌一さんは納得できない思いをずっと抱えていたのです。
高額な生前贈与には特別受益を請求
そんなある日、昌一さんの父が亡くなり、遺産分割協議が始まりました。しかしそのとき、母から驚くような話を聞かされました。なんと父は母に、自分が死んだら遺産は大部分を妹に残すように伝えていたというのです。
母は昌一さんに「妹には子どもがふたりもいて、生活が楽とはいえない。しかし、お前は公務員だし、子どもはひとりだけ。暮らし向きを考えても、妹の方を助けるべきでしょう。これはお父さんの意志でもあるんだよ」といいました。
これには当然、昌一さんは納得できませんでした。そこで、司法書士に相談してみたところ、それなら特別受益を請求できるとのこと。詳しく話を聞くと、相続以前に贈与された財産が高額だった場合、相続人同士の不公平を防ぐために、それらも相続財産の一部として計算し、遺産分割の対象とできるというのです。
昌一さんはこれを妹と母に話し再計算を提案したのですが、彼らはそれを受け入れず、家庭裁判所の調停を受けることに。その結果、昌一さんとしては納得いかない思いもあったものの、法定相続分通りで解決することになったのです。