生前贈与で相続税を3分の2まで節税できた事例
相続と贈与で税額の条件はどう違うのでしょうか。相続税の税率は贈与税に比べて低く、また基礎控除の額も大きくなっています。その点は相続税が有利。しかし、被相続人の所有財産がすべて一度に移動することになるのが相続です。そのため、移動する財産額に応じて必要になる課税額も、大きなものになってしまいます。
生前贈与は自らコントロールできる
これに対して、生前の贈与であれば、被相続人になる人が自らコントロールできる部分が格段に増します。つまり、希望する額の財産を希望する相手に確実に譲ることができるのです。
たとえば、一番基本的な贈与税の年間基礎控除額は1名につき110万円。これを利用し、複数回(暦年)、あるいは複数人に分けて贈与することで、税金の負担を大きく減らしながら、財産を第三者に移すことが可能になります。
具体的には、家族が亡くなって相続が発生し、控除分を差し引いたあとの課税財産が合計1250万円ある場合を考えてみましょう。
とくに相続税対策をしていない場合、このときの相続税率は15%ですから、納めなければならない相続税の税額は、1250万円の15%で187万5000円。ただし、そこから控除分の50万円が引かれますから、最終的には税金は137万5000円になります。
この際の相続税率は、課税財産の額によって変わる累進課税です。実際のところ、課税財産1000万円以下であれば税率は10%となっています。そこで、1250万円のうち、250万円を生前贈与していれば、課税分の相続は1000万円ということになり、税率は10%が適用されます。
節税策を考えて適切な方法で生前贈与
そこで、仮に250万円をそのままひとりの子どもに贈与していたケースで、計算してみます。贈与税額の計算は、直系尊属から250万円を贈与する場合、控除分の110万円を引いた残りの140万円に対しての贈与税率は10%となります。このときの税額は14万円です。
これに加えて、相続税が1000万円の10%分となりますから、合計すると114万円を納めることになるわけです。なんの節税策も利用しない場合と比べて、納税額は23万5000円少なくなります。
では、相続発生前の贈与でも遺産分に合算されてしまう3年以前より前に、無税で贈与できる年間110万円を3年間贈与していた場合はどうでしょうか。
330万円を移動させた場合、相続後に残った課税対象になる財産は920万円まで減っています。税率は同じく10%で、財産額1000万円には控除分がありませんから、相続税額は92万円です。
生前贈与の330万円は、税額控除の枠内に収まっていますから、税金は当然かかりません。最初の場合と比べ、43万5000円。贈与を一時に行ったときと比べても33万5000円の節税です。
事前に節税策を考えて適切な方法で生前贈与を行えば、結果的に贈与をしなかったときの3分の2近くまで税額を抑えられるのです。