相続トラブルでありがちな遺言書の更新怠り
遺言書を作成してから財産や相続人が変わることは多々あります。その場合、遺言書を更新していないとどうなるのでしょうか。遺言書の更新を怠ってしまい財産と相続人が変化したことにより、家庭裁判所の調停を受けることになり、兄弟の関係にも大きなひびが入ってしまった相続トラブル事例を見ていきましょう。
相続トラブルを避けるため公正証書遺言
「自分は70まで生きられないだろう」と、正人さんの父は親戚によく語っていました。両親、祖父母ともに早くに病死しており、自身も持病に悩まされていたため、早死にの家系だと思い込んでいたようです。
そこで定年退職の翌年、66歳のときに相続トラブルを避けるためにも公証役場で公正証書遺言を作成。「自宅と預貯金の半分を妻に、残りを長男の正人さんとふたりの弟たちに等しく相続させる」と書き残していました。
ところが本人の予想に反して父は70歳を超えても存命で、78歳を迎えた年には、なんと母が心筋梗塞に倒れ、先に帰らぬ人となってしまったのです。父は子どもたちと相談して自宅を売却し、正人さんの家に同居することになりました。
遺言書を更新せずに相続トラブル
しかし、そんな父も急に大病を患い1年後に亡くなってしまったのです。その後、正人さんたちは遺言書をみつけましたが、書かれていた実家の売却分や、母の相続分については宙に浮いた状態です。
正人さんは、最後に父の世話をした分、多く相続したいと提案したのですが、次男がこれに反発。自分は兄と違い、高校を出てすぐ働いて援助は受けなかったのだから、多くもらいたいと主張しました。
三男は、争いを避けるために遺言書を残した父の意志を尊重するべきだと仲裁していたのですが、結局この言い争いは解決せず、家庭裁判所の調停を受けることになり、兄弟の関係にも大きなひびが入ってしまいました。
父に遺言書を更新するように頼んでおけば仲違いすることにもならなかったのにと、正人さんは相続トラブルをいまも後悔しているそうです。