期限の勘違いで借金まみれになった相続トラブル
相続財産は、金銭的価値のあるプラスの財産ばかりではありません。借金や未払い金といったマイナスの財産も相続財産に含まれます。期限を勘違いしていたことで借金もすべて相続するはめになった相続トラブルについてみていきましょう。「知らなかった」で借金まみれになってしまった事例です。
父あてに巨額の借金の督促状が届く
ひとりっ子の大島さんは、母を早くに亡くし、父親とふたり暮らしをしていました。共働きでしたが、父親が病を患ってしまったために、2年ほどの間は入退院を繰り返す生活に。そして、大島さんの必死の看病もむなしく、6月1日、父は病院のベッドで息を引き取り、帰らぬ人となってしまいました。
家族が亡くなった場合、相続という言葉が頭をよぎりますが、大島さんは、父親に財産がないことを知っていたので、なんの手続きもしませんでした。それよりも葬儀や父の知人たちへの連絡などに追われ、確認の時間もとれない状況だったのです。
ところが、父を見送り、そろそろ落ち着いて遺品の整理をしようかと思っていた2カ月後の8月1日、父あてに巨額の借金の督促状が届いたのです。寝耳に水の大島さんですが、借金があっても、相続放棄をすればいいとたかをくくっていました。
勘違いと確認不足で相続トラブル
大島さんの知識では、確か「3カ月」という猶予があるはずなので、父の借金の存在を知った“いま”から「3カ月以内」に相続放棄をすることで、この問題は解決すると思い込んでいたのです。そして、そのまま2カ月の間なにもしませんでした。
本来、相続放棄は「相続権があることを知った」ときから3カ月以内に手続きすることで成立します。逆をいえば、父親が亡くなった6月1日から3カ月後の9月1日までの間に手続きをしなければなりません。
つまり、巨額の督促状が来たときに、思い込みに頼らず確認をし、すぐに手続きを済ませていれば、相続放棄の手続きは問題なく間に合っていたはずだったのです。
しかしときすでに遅し。すでに締め切りも過ぎ、10月1日になってしまっています。相続放棄の期限をとっくに過ぎてしまった大島さんは、泣く泣く父親の残した多額の借金を背負うことになってしまいました。ちょっとした勘違いと確認不足が相続トラブルとなり、大島さんの借金の原因になってしまったのです。