遺言書が何通もあることで大混乱の相続トラブル
遺言書さえあれば、相続が「争続」に発展するようなことはないと思われがちですが、かならずしもそうとばかりはいい切れません。遺言書が「争続」を招くこともあります。形式の不備には要注意です。遺言書が何通もあることで逆に大混乱になってしまった相続トラブル事例を見ていきましょう。
父親の友人が相続トラブルにあっていた
西島さんは父親と弟の3人暮らし。父親は友人が相続トラブルにあっていたこともあり、息子たちには「遺言書はしっかり書いてあるので、私に万が一のことがあっても大丈夫。その遺言書は、書斎の引き出しに入っている」と、ことあるごとに話していました。ちなみに、父親の財産というのは、自宅の土地・建物と預貯金です。
ある日突然、父親が病に倒れ、そのまま帰らぬ人となりました。父親が生前よく話していたように、書斎の引き出しを探してみると、そこから遺書がみつかりました。
ところが書かれてあった内容は「家を西島さんと弟に相続させる」ということだけです。預貯金を誰に残すのかについては書かれていなかったのです。
これでは、西島さんと弟の持ち分がさっぱり分からず、「家」が建物だけを指すのか、土地込みなのかも不明確です。そもそも、その遺言書を作成した日付も入っていませんでした。
父の財産を兄弟間で争う相続トラブル
その後、弟が父親の寝室から、新たな遺言書を発見しましたが、この遺言書にも日付は書かれていませんでした。2通目の遺言書の内容は「家を弟に、預貯金を西島さんに相続させる」というものです。
自宅の土地と建物の相続を望んでいた西島さんにとっては、到底納得できるものではありません。そこで、最初の遺言書同様、日付がないこともあり、あとから出てきた遺言書に関しても無効を主張しました。
2通の遺言書が出てきた場合、本来は日付が新しい方が有効となるのが決まりです。しかし、いずれの遺言書も日付の記載がなかったため、どちらが優先されるのか不明な状態です。内容としてもどちらも法的に認められるものとはいいがたいもの。つまり、どちらにも不備が生じている状態です。
結局、遺言書があるにも関わらず、父の真意もわからず、父の相続財産を巡って兄弟間で争う相続トラブルになってしまいました。