相続トラブルで家族の不和だけが残る結果の事例
相続というのは、ただ被相続人が亡くなった時点で持っていた財産を、相続人の間で平等に分けるというだけで成り立つものではありません。生前の被相続人が贈与した財産も、相続財産の一部と考えられるため、相続の際には、生前に相続人が受けた援助もすべて考慮したうえで考えなければならないのです。
父は亡くなる前に遺言書を残していた
横尾さんには、すでに結婚して子どもを持つ姉がいます。姉夫婦とその子どもは横尾さんの実家に住み、両親と同居。一方の横尾さんも結婚はしていますが子どもはなく、実家を離れ、夫婦でふたり暮らしをしている状態です。
そんななか、父に病気が判明しました。大きな病気でしたが、手術と入院を経て退院。普通に生活ができるようになり、実家に戻って暮らしていたのですが、退院から1年ほどで病気が悪化し、そのまま亡くなってしまいました。
しかし、大病だったこともあり、父も先が長くないことはわかっていたようです。姉や母と相談しながら亡くなったあとのための準備を整えていました。そのお陰もあって、葬儀などは滞りなく終了。一段落したところで、相続の話になりました。
母の話によると、父は亡くなる前に遺言書を残していたとのこと。保管場所についても、生前に母には伝えていたようです。几帳面で抜かりない父らしいと思いつつ、これなら相続も何事もなく終わるだろうと安心していたのですが、ここで問題が起こります。
預貯金を折半するのでは不公平だと主張
遺言書には、母の生活の面倒を姉夫婦がみることを条件に、自宅は姉が相続し、預貯金は姉と横尾さんで折半するようにと書かれていました。姉が自宅を相続することについては、同居していることもあって、横尾さんも異論はありません。しかし、預貯金を折半というのは話が別です。
というのも、横尾さんの姉は結婚や子育てのために、父からかなりの援助を受けていたのです。一方の横尾さんは、子どもがいないとはいえ、結婚時の援助もほとんどありませんでした。
さらに、家を出た横尾さんと違い、同居している姉には、家賃などの心配がありません。それなのに預貯金を折半するのでは不公平だと主張したのです。しかし、母と姉は遺言書通りなのだからと反対。横尾さんは、次第に遺言書も母や姉と話し合って作ったのではないかと疑い始めるようになりました。
そこで、税理士に尋ねてみたところ、請求することができるのは遺留分の金額だけで、それ以上は難しいといわれてしまいました。結局、相続トラブルで横尾さんたち家族の不和だけが残る結果になってしまったのです。