相続で住む家を取り上げられる相続トラブルとは
大きな価値を持つ不動産は住み続けるケースも考慮して相続手続きをしなければなりません。相続で住む家を取り上げられる相続トラブルを見ていきましょう。佐々木さんは夫と子どもとの3人暮らしでした。しかし、5年前に父が他界したことを機に実家に引越し、ひとりで暮らしている70代の母親と同居することにしました。
遺産分割について法定相続分で分ける
父親が亡くなったときは、父親の財産だった自宅と預貯金はすべて母親が相続しました。母親は、その財産を生活費や医療費に充てて暮らしていました。しかし、父親の死からしばらくたったころ、母親は自宅で転んだことがきっかけで寝たきりになってしまい、佐々木さんは夫とともに介護をすることになりました。
佐々木さんには所帯持ちの弟がいるのですが、弟一家は、実家から離れて暮らしています。そのため、介護などはすべて佐々木さんたち夫婦が行っていました。
母親は身体の自由が効かないために介護は必要でしたが、とはいえ、ぼけることもありませんでした。しかし、寝たきりになって数年後に肺炎をこじらせ、他界しました。残された財産は、自宅の土地と建物分の3500万円と預貯金300万円、合計3800万円です。
葬式のあと、弟と遺産分割について相談しようとしたところ、法定相続分で分けようと主張してきました。つまり1900万円ずつ二等分にしろということです。
相続トラブルで子どもたちに争続の火種
しかしこの金額は、佐々木さん一家が暮らしている自宅の価値も合わせたもの。母親が残した預貯金の300万円を弟に渡すだけでは1900万円には到底届きませんし、佐々木さん夫婦の預貯金で補うこともできません。
すると弟は、佐々木さんが住んでいる実家を売却し、現金化して分割する「換価分割」を提案してきました。しかし、それでは佐々木さんが住む家がなくなってしまうため、拒否することにしました。
それがダメならということで弟が提案してきたのは、不動産評価額の半分の1750万円を現金で払うという「代償分割」です。そうはいっても、佐々木さんには、そんな大金をすぐに用意するようなことはできません。
仕方なく、最後の手段として実家を弟と「共有にする」ことで決着しました。これでとりあえず佐々木さんは住み続けることはできることになったのですが、問題はいずれ佐々木さん姉弟が亡くなったときのこと。
自宅を子どもたちに残すときの相続がさらに複雑になってしまうのは目にみえています。結局、相続トラブルでそれぞれの子どもたちに「争続」の火種を残すことになってしまいました。