相続人が認知症の場合の遺産分割はどうする?
相続人に認知症の人がいる場合、その人を無視して遺産分割協議はできません。どのように対処すればいいのでしょうか。夏樹さんの母は、父と実家でふたり暮らし。しかし数年前に認知症を患って以来、父が母の介護をしています。ところが、そんな父も数カ月前に入院。つい先日息を引き取ってしまったのです。
相続人が認知症で遺産分割協議ができない
父が入院してからは、母をひとりにすることもできないため、近所に住む夏樹さんが母を引き取り、一緒に暮らしています。夏樹さんには姉がひとりいるのですが、父が亡くなったことで、夏樹さんは姉と母と3人で遺産の相続を行うことになりました。
しかし、遺産分割をしようと思ったところで困ったことがわかりました。相続人のひとりである母が認知症になっているため、そのままでは遺産分割協議が行えないのです。
こういった場合の対処法を調べてみたところ、法定後見人を立てないと遺産分割協議はできないとのこと。費用などが心配になったので、夏樹さんは専門家のところに相談にいきました。
すると、後見人を立てれば遺産分割は問題なく行えるものの、一度それを依頼すると、母が亡くなるまで毎月一定の報酬を支払わなければならないと判明したのです。また、母の財産管理にも制限が出てしまいます。
相続人が認知症で法定相続分通りに分けた
姉とも相談したところ、できればそれは避けたいという話になりました。そこで、いくつかの司法書士事務所などで相談してみたところ、遺産分割協議をせずに財産を分ける方法もあると教えられたのです。
その方法とは、法定相続分通りに遺産を分けること。遺産分割協議をして相続財産を分けるやり方が一般的になっていますが、本来の原則に従った、正当な分け方なのだといいます。
このことを姉に相談すると、分割協議をしないということによって、相続財産の分け方が制限され、税金がかかったりするのではないかと心配していたのですが、夏樹さんの家に残されていた財産は自宅とわずかな預貯金だけ。相続税が課せられることもありませんでした。
司法書士の話では、自宅を3人で共有にして預貯金を法定相続分で分ければ問題ないとのこと。これなら、母が亡くなったときに遺産分割を行えば問題ないだろうという話になり、法定相続分で相続を行うことで解決したのです。