民法改正後の相続の「仮払い制度」の上限額は?
民法大改正によって相続手続きも改正されます。たとえば、相続財産の一部である預貯金を、相続人が引き出せるようになりました。通常、銀行は口座名義人が亡くなったという情報を受けた時点で、その口座を凍結してしまいます。相続の仮払い制度について詳しく見ていきましょう。
相続の仮払い制度で必要な金額を引き出せる
現状、仮に相続人が銀行に「葬儀費用のために残額を引き出したい」と連絡すれば、まさにその時点で取引は停止されてしまいます。預金の移動ができなくなるのです。
これは、一部の相続人が勝手に財産を引き出して使用するのを防ぐための措置です。引き出しのためには、遺産分割協議書や遺言書の写しが求められました。つまり、相続人の間で遺産分けの内容が合意され、遺産分割手続きが完了している必要があったのです。
それに対し、民法改正後は口座がある金融機関や家庭裁判所で手続きを行うことで、必要な金額を引き出せることになりました。ただし、これは仮払いの扱いで、遺産分割の対象になります。
相続の仮払い制度のひとりあたり上限額
相続の仮払い制度で引き出した資金は、葬儀などの当面の資金ばかりではなく、相続税の納税にも活用することができます。遺産分割協議が相続税の納税期限を迎えると、一旦全員で納税手続きを行わなければなりません。改正によって、この納税資金に遺産が利用できることになったのです。
実際の手続きができるのは、金融機関か家庭裁判所です。金融機関の場合、比較的簡単で相続人ひとりだけでも行えます。相続の仮払い制度の上限額はひとりにつき「残高の3分の1×法定相続分」、またはひとつの金融機関で150万円までです。
もし納税や葬儀費用で上限以上の資金が必要になった場合は、家庭裁判所に申請を行います。その場合、家庭裁判所に相続人全員で審判や調停の申立を行わなければなりません。
こちらには上限額はありませんが、仮払いが必要になる正当な理由が求められることになります。手続きの手間や時間を考えれば、本当に必要な場合以外は金融機関で済ませた方が賢明です。