遺産分割合意でも印鑑証明なしでは相続できない
遺産分割協議が成立しても、その後の手続きでほかの相続人が協力してくれないと、不動産が相続できなくなってしまいます。「印鑑証明書を渡さない」と不動産の相続と登記申請に協力しない親族によっておこったトラブル事例を見ていきましょう。ちなみに遺言書がある場合は印鑑証明書、不要です。
遺産分割協議は終了して協議書を作成
武志さんは3人兄弟の次男。兄と弟は県外に出て就職し、結婚して自分の家庭を持っています。武志さんも結婚はしているのですが、地元に残っており、家族と共に両親と実家で同居しています。
母はすでに亡くなっていたのですが、ついに父も亡くなり、兄弟で財産を分割して相続することになりました。とはいえ、残されている財産は自宅が主で、預貯金はそれほど多くありません。
武志さんは、同居していたため自宅を相続し、残りの預貯金は兄と弟に譲ることになりました。兄弟も「預貯金を譲ってくれるなら充分」と条件を了承し、無事に遺産分割協議は終了しました。その場で協議書も作ったため、遺産分割についてはなにも心配はなくなったと武志さんは思っていたのです。
印鑑証明書は渡さないといいだした
ところが、協議から数カ月がたったころ、兄から突然電話がありました。いわく、「やはりあの遺産分割には納得できない」との電話だったのです。しかし分割をやり直すとしてももう納税期限は迫っているので難しいと武志さんはいったのですが、兄は譲りません。
それどころか、遺産分割をやり直さなければ、印鑑証明書は渡さないといいだしたのです。これがないと、相続登記はできません。武志さんは仕方なく司法書士に相談。「3年以内の分割見込書を提出すれば期限を延長できる」と聞き、その手続きを行いました。そしてそのうえで再度遺産分割協議を実施したのです。
その結果、武志さんは自宅と法定相続分の差額を支払い、換価分割を行うことに。2度目の協議は紛糾し、兄弟仲も悪くなり、武志さんには惨憺たる結果になってしまいました。