相続回復請求権で終了した相続でも取り返せる
被相続人が亡くなったことを知らなかった場合、相続人のひとりが勝手に財産を独り占めしてしまうケースもあります。相続開始を知らないうちに相続が終了していた事例を見ていきましょう。相続回復請求権を行使することで無事に預貯金の一部を遺産として取り戻すことができた事例です。
母はすでに亡くなったといわれた
加奈子さんと姉は昔からあまり仲がよくない姉妹でした。佳奈子さんが家を出て以来、電話をしたり家を訪ねたりなど、交流を持つこともほとんどありません。最後に会ったのも10年近く前、父の葬儀の席で、そこでもほとんど会話はありませんでした。また、佳奈子さんは母とも折り合いが悪く、実家を出てからは疎遠気味です。
佳奈子さんは高校卒業後は実家を出て、別の県で大学に進学、そのまま就職し、家庭を持って暮らしています。しかし、姉は数年前に離婚し、いまは実家暮らしです。姉が帰ってからというもの、佳奈子さんはますます実家を避けていました。
しかし、ある年の母の誕生日、母が今年で傘寿を迎えることに気がつきました。良好な関係ではなくても実の母の大事な祝いごとです。数年ぶりに思い切って連絡を取ろうと考えました。
佳奈子さんが実家に電話をかけたところ、電話を受けたのは姉でした。面倒そうな姉に苛立ちつつ、母への取り次ぎを頼んだところ、姉の返事は「母ならいない」というもの。いつ戻るのかと尋ねると、なんとすでに亡くなったといわれたのです。
相続回復請求権で財産を取り返せるはず
信じられない姉の言葉に驚き動揺している佳奈子さんをよそに、姉は今忙しいからと、そのまま電話を切ってしまいました。当然ながら納得のいかない佳奈子さん。葬儀によばれなかったことはもちろん、相続などについてもすべて勝手に進めてしまったのかと怒りを感じ、後日実家を訪ねたのです。
仏壇に手を合わせ、話をさせて欲しいと伝え、どうにか姉と顔を合わせた佳奈子さん。話の流れで相続について聞くと、財産は自宅と預貯金だけで基本的に姉が管理していたため、亡くなってすぐに引き出したというのです。
「亡くなる前には自分が世話していたのだから当然の権利だ」といってはばかりません。佳奈子さんは、このまま泣き寝入りするしかないのかとも思いましたが、専門家に話を聞いてみようと司法書士に相談しました。
すると、相続回復請求権を行使することで、財産を取り返せるはずだとのことです。そこで司法書士に協力してもらって、正式に書面で請求をしたことで、佳奈子さんは無事に預貯金の一部を遺産として取り戻すことができたのです。