相続回復請求権に応じないケースは家庭裁判所
相続回復請求権が行使されるケースは、決して多くありません。相続回復請求権とは、相続資格を持たない人物が勝手に遺産の権利を主張している場合や、相続人のひとりが相続財産を占有している際に、本来相続権を持つ相続人が、その財産を請求できる権利のことです。
相続回復請求権が必要になる主なケース
被相続人が亡くなった時点で、通常通りに相続についての話し合いを行っていれば、この相続回復請求権の下に請求を行うことはまずありません。相続回復請求権が必要になる主なケースは、戸籍上は相続権を有しているものの、実際には相続権を持たない人物が、相続財産を所有している場合です。
たとえば、被相続人によって相続を廃除された人や、遺言書の偽造などを行って欠格事由に該当している人などが、不当に財産を受け取ってしまっているといった状況が当てはまります。
実際に相続権の回復を求める場合、まずはその財産を所有している本人に対して請求を行います。書面に請求内容などを書いて送付するだけでも合意が得られれば問題ありません。
しかし、たとえば欠格などに納得できないとして財産を占有している人が相手の場合は、その請求にも応じないことが多いため、そういうケースでは家庭裁判所に遺産分割調停を申し入れなければいけません。
相続回復請求権の相手に返還請求を行う
相続回復請求権の請求相手がすでに相続財産の一部を使用してしまっている場合もありえます。こういったケースでは、使い込まれた財産の金額を口座の履歴などから確認し、その分の返還請求を行うことになります。
また、欠格や廃除になっていない相続人であっても、正式な遺産分割の手順を踏まずに財産を取得し、それを使い込んでしまうようなことは、もちろんしてはいけません。もしこういったことをしている事実が明らかになった場合には、改めて遺産分割手続きを行って、その人の取得分から使い込んだ金額分を差し引いて計算することになるのです。
もし遺産分割協議を行う前に遺産を利用する必要に迫られたときは、その旨を相続人の間で共有し、その使用目的や金額などについて記録を残しておくべきです。
ただし、銀行ではこういった事態に備えて、所有者が亡くなったことを知った時点で口座を凍結しています。そのあとは引き出しができなくなるので、その点にも要注意です。