相続を放棄して余分にもらった年金はどうなる?
公的年金をもらっている肉親が亡くなったら受給停止の手続きが必要です。ただ、残された身内が相続放棄をしていたらどうなるのでしょうか。同居していた父親が数年前に他界した谷山さん。そのときのさまざまな記憶も、大分、薄れてきたある日のことです。郵便受けに見慣れない手紙をみつけました。
受給停止せずに払い過ぎとなった年金
発信元は日本年金機構。年に一度の「年金定期便」を別にすれば、まだ定年までにはそこそこの時間がある谷山さんには、あまり馴染みあるとはいえない発信元です。
念のためにと封を開けてみると「払い過ぎとなっている年金」などという記載があります。驚いて内容をしっかり確認してみると、父親が死亡した時点で、受給していた年金については受給停止の手続きをしなければいけなかったということでした。
亡くなったことで年金をもらう資格がなくるので、死亡後に振り込まれた分は返金しなければなりません。「なるほど、ごもっとも」の話ではありますが、谷山さんには引っかかることがありました。
じつは最後の数年間こそ同居しましたが、谷山さん親子は折り合いが悪く、しかも父親は保証人などをいくつも引き受けてマイナス資産の方が多かったのです。
相続放棄すれば年金返納の義務もない
結果的には、死亡届や葬儀は谷山さんが出しましたが、相続に関しては相続放棄の手続きをしたので、谷山さんはお金関連に関しては無関係だと考えていたのです。
もちろん、父親の銀行口座の中身についても一切知りません。亡父は羽振りがよかったこともあり、けっこうな年金額を受けとっていたはず。数年分ということになれば、返納しなければならない額は数百万円単位です。
年金機構に確認してみたところ、死亡後に振り込まれた年金返納については、死亡時点で同居していた親族や同居していたことのある近親者宛に、自動的に返納を求める照会文書などが送付されるのだということがわかりました。
ただし照会と返納義務は別。相続放棄を行えば、相続人ではなかったことになります。亡父の資産とは無関係になりますし、そもそも受けとっていない年金分を返納する必要も義務もないのです。