相続時精算課税制度の申告漏れで多額の納税
相続時精算課税制度を使えば非課税で多額を贈与できますが、相続時に相続税の精算が必要になることを忘れてはいけません。相続時精算課税制度は非課税だからと油断は禁物。申告漏れで多額の納税となってしまったトラブル事例を見ていきましょう。洋太郎さんの父は、ある大企業の重役で、マンション投資などを行い成功している資産家でした。
相続時精算課税制度を利用して不動産
洋太郎さんはそのひとり息子、妻や子どもと暮らしながら、会社勤めをしています。父は定年を控えたころから相続税を意識し始め、節税対策として洋太郎さんへの生前贈与を始めました。毎年110万円ずつなら贈与税がかからないと聞き、その金額を渡し続けていたのです。
あるとき、洋太郎さんは父にならって不動産投資をしてみようと考え、その元手として、「贈与額を増額してくれないか」と父に相談しました。父の答えは、贈与税がかかるから難しいというもの。しかし洋太郎さんは、事前に相続時精算課税制度を利用すれば2500万円まで非課税で贈与できると知っていたため、それを提案しました。
父もこれを了承し、無事に相続時精算課税制度を利用し、洋太郎さんは投資用の不動産を取得したのです。そしてその後、父の贈与はそれからも同様に続けられました。
その後、父は20年ほど贈与を行ったところで他界。洋太郎さんは相続税について申告を行いました。しかしこのとき、相続時精算課税制度で贈与されていた資金にかかる相続税のことを記入し忘れてしまったのです。
相続時精算課税制度を利用する注意点
数カ月後、税務署から連絡があり、洋太郎さんは税務調査を受けることに。そこで初めて、自分が申告を間違えていたと知らされました。
さらに調査員が告げたのは、相続時精算課税制度を一度選択すると、それ以降はすべての贈与が精算課税に加算されるということ。その結果、精算課税制度後の贈与がすべて相続扱いになり、申告ミスの加算税と合わせて、高額の税金が課せられてしまったのでした。
相続時精算課税制度を利用するときの注意点として、1つは利用できる人が限定されること。贈与者は60歳以上の父母や祖父母、受贈者は20歳以上の子や孫に限られます。2つめの注意点は、暦年課税贈与へ戻せないこと。一度相続時精算課税制度を選択してしまうと、暦年課税贈与に戻すことができなくなります。
相続時精算課税制度を利用するときの3つめの注意点は、贈与をして終わりではないこと。2,500万円の特別控除が適用される贈与財産も、相続が発生するとともに相続財産に加算したうえで、相続税の計算をし直さなければなりません。