相続時精算課税制度で相続財産を減らす注意点
相続時精算課税制度のメリットは、実質的に贈与税をかけることなく、被相続人が亡くなる前に財産の名義を受贈者に移せるという点にあります。どういったケースで利益を生むのかというと、所持しているだけで、利益を得られる財産がある場合です。具体的な相続時精算課税制度の仕組みを見ていきましょう。
相続時精算課税制度で相続財産を減らす
たとえば、相続時精算課税制度を使って賃貸不動産や株式などを贈与したとします。その場合、財産の名義人は受贈者です。そのため、贈与を受けたあとに発生した月々の家賃収入、株式の値上がり益や配当などは、すべて受贈者のものとなります。
これは所得税の対象にはなりますが、贈与税は課せられません。不動産投資の元金を贈与する場合でも同様で、先に財産を渡すことで、その財産から得られる利益を非課税にできるわけです。
もし被相続人が、相続時精算課税制度を利用せずにこれらを持ち続けていた場合、生まれた利益で相続財産は膨らんでしまいます。所有財産が多くなるのはいいことですが、当然その分、相続税額も大きくなってしまうのです。
このように、放っておいたら相続税額を増大させてしまう財産を贈与することによって、結果的に相続財産を減らすことができるわけです。
相続時精算課税制度を利用した後の贈与
また、相続時精算課税制度で贈与された財産は、相続税の対象になりはするものの、相続財産に差し戻されることはありません。相続開始の3年以上前に贈与されていれば、それは贈与財産として扱われるため、遺産分割協議などで所有権が争われる心配はありません。
相続時精算課税制度を利用したい場合、手続きはそれほど難しくありません。通常の贈与税のように申告書を用意。申告書には相続時精算課税制度の利用について記入する欄があるので、そこに詳細を記入します。
その後、贈与者が亡くなり、申告を行う際に、相続財産のなかに制度を使って贈与した財産価額を記入します。これによって算出される税額を納めれば終了です。
ただし、相続時精算課税制度を利用した場合、その後の贈与には要注意です。相続時精算課税制度の対象になるのは、特定の贈与財産ではなく、ある贈与者から受贈者へ、相続時精算課税制度選択後に贈られた贈与全体です。適用後に同じ人物間で暦年贈与をしようとしても、すべて相続時精算課税に組み込まれます。この点には注意しましょう。