不動産は相続登記で所有者をはっきりさせるべし
一般的に不動産は金額が大きく、相続財産のなかでも大きな割合を占めるものです。また、市場価格よりも財産評価額が低くなることが多い財産でもあります。購入金額と比べ、相続時の評価額は数十%近く下がっていることも少なくありません。この下落の理由は、建物が時間の経過に伴って劣化するからです。
不動産の名義が故人のままでトラブル
それに合わせて価値も下がっていきます。とはいえ、物件の所有者が移るたびにその品質をチェックするのは現実的ではありません。そのため、建物の種類などに応じて、法的に使用期限と価値の減退割合は決められています。これを減価償却といいます。
相続時には数千万円の価値があった建物が、10数年でほとんど価値がないと判定されることもあるのです。ただしこれはあくまで建物の評価基準で、土地の評価はまた異なります。
不動産の相続は計算も大変で難しいことが多いのですが、じつは名義変更の手続きをしていなくてもそれほど困ることはありません。登記で所有権を明らかにしていなくても、いきなり家を追い出されるようなことはまずないのです。
ただ、不動産の名義を故人のままにしておいたために、将来の相続人にトラブルが起こる可能性は考えられます。たとえば、家族で住んでいた実家を亡くなった父から母が相続し、次に母が亡くなったことによって、子どもが受け継ぐことになったとします。
相続後はすぐに登記をしておくべし
もしこの建物を相続人である子どもが改築したり売却したりしようと考えたとしても、相続登記をしなければ、手出しすることはできません。登記で名義を書き換え、その物件が自分の所有財産であると証明しない限り、売却をする権利も改修をする権利も与えられないのです。
もし母が自宅を相続したときに登記をしていなかったとすると、この物件の所有者はすでに亡くなっている父になっています。しかしこの子どもは母から物件を相続したため、まずは母が物件を所有していたことを証明しなければいけません。
そしてそのうえで、母からの相続登記の手続きを行う必要があるのです。つまり、合計2回の相続と所有権の移動について手続きをしなければいけません。
不動産登記は手続きが複雑なため、専門家に依頼するのが基本です。そのためには少なからず費用と手間がかかります。このような問題を子どもたちに残さないためにも、相続後はすぐに登記をしておいたほうがベターなのです。