相続税には贈与税より枠の大きい配偶者控除
配偶者に贈与を行う前に贈与と相続のどちらが得になるか、登録免許税や不動産取得税の確認もしなければなりません。配偶者控除を活用したがかえって税金がかかってしまったトラブル事例を見ていきましょう。太一さんの妻は6つも年下でありながらしっかり者で、昔からかなりの倹約家でした。
相続税対策として自宅を妻に贈与した
太一さんは一般企業に勤めるサラリーマンで、生活に困ることはないものの、それほど稼ぎは多くありません。しかし、妻がパート勤めをしつつ生活を切り盛りしてくれたお陰で、一軒家を買い、ふたりの子どもも、無事に大学を出るまでに育てることができました。
子どもたちが独立したころ、太一さんは、妻になにかしらのかたちで感謝を伝えられないかと考えました。そんな折り、知り合いが相続税対策として自宅を妻に贈与したという話を聞きます。
自宅なら贈与税も控除できるとのこと。太一さんは将来、相続税がかかる可能性もあるし、「ちょうどいいから自分も妻に自宅を贈ろう」と考えました。
相続税には枠の大きい配偶者控除
そこで司法書士に依頼し、名義変更をしました。司法書士への報酬が必要だとは思っていたのですが、不動産の登記には登録免許税という税金もかかるといわれました。さらにその後、妻の元に不動産取得税の通知書が届いたのです。
これに焦った太一さんは改めて司法書士に相談。このとき初めて不動産の贈与に至った経緯などを話しました。すると司法書士はいいづらそうに「不動産の控除なら確かに贈与税はかけずに自宅を贈与できます。しかし、贈与税以外のことも考えなければいけないのです」といいました。
詳しく話を聞くと、相続税には、贈与税よりも枠の大きい配偶者控除があるうえ、法改正後は配偶者居住権も保障されているとのこと。また、不動産の登録免許税は、贈与の方が高く、不動産取得税に至っては、相続なら非課税だといわれました。太一さんは詳しく調べずに贈与したことで、ムダな税金を納める結果になってしまったのです。