相続税の配偶者控除を利用で逆に損するケース
相続税の控除では配偶者が大きく優遇されています。これは、一般的に被相続人が亡くなった際に、もっとも大きく生活上の影響を受けるのが配偶者だからです。相続税による財産の減少で、場合によっては住居を手放さなければならない必要が出てくることすらあるために、さまざまな控除や特例が用意されているのです。
配偶者控除を使えば子ども分の相続税だけ
しかし、これを過信するのはとても危険なことです。じつはこの制度で相続税を抑えることができても、問題の先送りにしかなりません。なぜ配偶者控除を利用するのが危険なのか、例を用いて説明していきます。たとえば、両親と子どもふたりの家庭の場合を考えてみましょう。
この家庭で父が亡くなったとしたら、相続人は配偶者である母と子どもふたりの合計3人になります。仮に課税遺産総額が4000万円で、法定相続分通りに相続を行ったとすると、相続財産は、配偶者が2000万円、子どもがひとり1000万円ずつです。
配偶者に対する相続税率は15%で、控除額が50万円なので、250万円が課税されます。子どもは10%が課せられ、控除がナシなので、100万円です。最終的に支払う相続税の総額は、450万円となります。さらに配偶者控除を使えば子ども分の相続税だけなので200万円です。
配偶者控除を利用すればゼロになる
これに対して、配偶者控除を十分に利用するため、すべてを母が相続した場合はどうなるでしょうか。課税遺産総額は4000万円なので、税率20%、控除額は200万円。つまり、600万円の税金が課せられます。しかし、これは配偶者控除を利用すればゼロになるわけです。
ここまでのことを考えれば、配偶者控除を利用して相続した方がずっとお得に思えますが、問題はこのあとなのです。控除を利用して財産を受け取った母も、いつかは亡くなります。そのとき、その財産を相続するのは、法定相続人の順位通りなら、子どもということになります。
このとき母が残す財産には、父から相続した財産が含まれます。そのため、父の遺産である4000万円と、母の財産がすべて子どものものとして相続されるのです。
さらに、この相続では父からの相続の場合よりも法定相続人が少ないため、基礎控除額が減少。課税遺産総額がますます大きくなります。こういった条件によって、相続税は先ほど算出された600万円よりも大きくなり、最終的に税負担額の総額が大きくなるわけです。