贈与には配偶者に特別な優遇や条件などがある
贈与に関しては、どうしても相続税の節税対策に意識が向かいがちです。しかし、贈与では「誰にどんな財産を引き継ぎたいか」という、被相続人となる人の意思が反映できる点も大きなメリットと考えられます。相続は被相続人の意思とは無関係に財産の移転が行われるものだからです。
配偶者間の贈与は手厚く保護される
法律もその点を配慮し、各種の優遇策が用意されています。家族内で利用できる仕組みは複数あって、なかでもとくに手厚く保護されるのが配偶者間の贈与です。
通常、生活をともにし、家計も一体化していることが多いため、日本では夫婦間の贈与という考え方が希薄です。その点を勘案し、夫婦の一方が死亡した場合に残された配偶者の生活を守るための制度が拡充されてきました。
婚姻期間が20年以上の夫婦に適用されるというのが前提ですが、たとえば、居住用不動産またはその取得のための金銭の贈与は2000万円まで非課税というものなどが、その代表です。
これは相続税制上の優遇ですが、さらに2018年には、40年ぶりという相続に関する民法改正が行われ、この夫婦間の贈与優遇がより一層有利なものになることが決まりました。
婚姻20年以上の配偶者への贈与は優遇
確かに、これまでも居住用建物の贈与は一定額まで無税でしたが、相続発生時にはその分も合算して相続財産にカウントされることになっていたのです。たとえば、相続人が妻と子どもふたり、相続財産の総額が3000万円、そのうち生前贈与された住居の評価が2000万円の場合などが問題でした。
法定相続割合は妻が2分の1、子ども2分の1です。妻の法定相続分は1500万円ですから、子どもたちから要求されれば、妻は超過分の500万円を渡さなければならなかったのです。
民法の改正によって、それが変わります。贈与や遺贈(遺言で相続財産と相続人を指定)によって配偶者に住居などが贈られた場合は、相続財産の分割対象とみなさない、というようになるのです。
贈与に関しては「婚姻20年以上の配偶者」「居住用建物およびそのために資金」という条件があれば、特別な優遇や条件などがあることを覚えておきたいものです。