遺族厚生年金は子どもがいなくても配偶者に支給
年金制度は2階建て構造になっており、遺族年金の場合も同様です。つまり、国民年金と厚生年金に加入している会社員が亡くなったとき、その遺族に対して、国民年金からは遺族基礎年金が、厚生年金からは遺族厚生年金が支給されます。遺族厚生年金は、大黒柱を失った遺族の強い助けとなるものです。
遺族基礎年金の支給額は定額ではない
遺族厚生年金を受けるには、遺族基礎年金と同様、亡くなった人の保険料納付期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要です。
さらに「厚生年金の被保険者のときに亡くなった」「病気やケガが原因で初診日から5年以内に亡くなった」あるいは「老齢厚生年金の受給資格期間を満たしている」「障害厚生年金の受給権者であった」などが要件になってきます。
遺族基礎年金が受けられるのは子どものいる配偶者とその子どもが遺された場合のみでしたが、遺族厚生年金は子どものいる配偶者だけでなく、子どものいない配偶者も受けることができます。また、大きく違うのは、遺族基礎年金のように定額ではないという点です。
遺族厚生年金の支給額は収入や加入期間によって異なります。平均標準報酬月額とは、被保険者期間の計算の基礎となる各月の標準報酬月額の総額を、被保険者期間の月数で割った金額のことです。
遺族厚生年金は報酬の額や期間で変化
なお、水準に用いる再評価率(2003年3月までの期間は、7・125/10000、2003年4月以降は、5・481/1000)は、名目手取り賃金変動率や物価変動率を反映させて毎年改正されることになっています。
平均標準月額に再評価率と厚生年金加入月をかけたものが老齢厚生年金額となり、その3/4が遺族厚生年金額となります。
さらに、遺族厚生年金の特徴として、就職して間もない人が死亡するなど、加入期間が満たないような場合でも300カ月とみなして計算されます。遺された者を守るという意味では、安心感のある年金だといえます。
いずれにせよ、遺族厚生年金の計算は、金額が一律であった遺族基礎年金と違って、故人が受けていた報酬の額や納付期間によって変わってくるため、把握は難しくなります。
受給できる可能性がある場合は、年金事務所に相談するのが確実でしょう。年金事務所に直接出向くか、まずは年金ダイヤルで問い合わせてみることをおすすめします。
遺族厚生年金の優先順位と年齢条件
遺族厚生年金を受けることができるのは、配偶者、子ども、父母、孫、祖父母です。ただし、そのなかに、優先順位や年齢条件などが定められています。
第1位は、配偶者(妻、または55歳以上の夫)、または子ども(18歳到達年度末日の3月31日を経過していない子ども、障害年金の障害1級または2級の子どもは20歳未満までで、婚姻していないこと)です。
第2位は子どものいない妻、子どものいない55歳以上の夫、第3位は父母(55歳以上)、第4位は孫(18歳到達年度末日の3月31日を経過していない孫、障害年金の障害1級または2級の孫は20歳未満までで、婚姻していないこと)、第5位は祖父母(55歳以上)となります。
第1順位に受給権がある場合は、第2順位以下の人は受給権対象者にはなりません。また、先の順位の人が受給権を失った場合でも、次の順位の人に受給権が移行するということはありません。
なお、夫の死亡時に30歳未満で子のいない妻に対して支給される遺族厚生年金の支給期間は5年間のみとなります。