遺産分割で判断力に問題がある相続人トラブル
頼子さんの夫の進さんが亡くなって3カ月。夫婦の間には子どもがいませんから、相続人は妻の頼子さん、進さんの兄と妹ふたりの合計4人となります。ところが遺産分割のための話し合いを実際に始めてみると、困ったことが分かりました。お葬式のときから、泣き崩れるなどちょっと様子のおかしかった夫の兄に、認知症の症状があることがわかったのです。
遺産分割協議は相続人全員の合意で成立
年の離れた義理の兄はすでに100歳近く。まだ子どもだったころの夫を、親代わりに面倒みてきた人です。
一族の最長老という思い込みが強く、実家のことが第一。頼子さんのことは弟の嫁と多少見下す傾向が強く、まるで子ども扱いで、妻に法定相続分が全財産の4分の3だということにどうしても納得がいかないようです。
義理の妹さんたちがふたりがかりで説得しようとしてくれますが、頑として耳を貸しません。また、いくら正常な判断が難しいとはいえ、遺産分割協議は相続人全員の合意がなければ成立しません。
それに、遺産については頑固ですが、ほかのことはそこそこ当たり前の対応をするので、誰がみても正常な判断に支障があるというほどでもないのです。何度話し合っても、遺産の分け方になると堂々巡りでした。
法定相続割合の通りでの遺産分割協議
結局、頼子さんたちは途中から立ち会ってもらっていた司法書士の先生に知恵を借りることにしました。もし、協議がまとまらなければ家庭裁判所に間に入ってもらわなければならなくなります。
それよりは肉親に代理人になってもらう方がよいだろうということになり、義兄の長男に依頼し家庭裁判所から成年後見人に選任してもらいました。正式に成年後見人となったこの甥を含めた4人での話し合いによって、無事に法定相続割合の通りでの遺産分割協議がまとまりました。
甥から聞いた話では、義兄は一旦頼子さんに渡った遺産分はゆくゆくは彼女の親族へと受け継がれ、弟が自分たちの父から受け継いだものが他の家へ移ってしまうのが納得できなかったということのようでした。