「遺言代用信託」と「遺言信託」似て非なる別物
「遺言代用信託」では、被相続人の死後、本人が望んだかたちで財産の移転が可能です。ただし、これには課税額を下げる効果はありません。生命保険のように通常の相続財産より大きい非課税枠もないため、効果を実感しにくい部分もあるかもしれませんが、被相続人の意思によるというメリットがほかに代えがたいともいえます。
遺言代用信託には3つの種類がある
3つの種類がある「遺言代用信託」を詳しく見ていきましょう。「一時金型」は、信託として残された財産を、一括で受け取ることができる方法。被相続人が亡くなったあと、葬儀などで必要な費用もこの財産から工面することができます。必要な書類も比較的少なく、すぐに財産を受け取ることが可能です。
「年金型」は、一定の期間にわたって、残された財産を分割で受け取ることができます。子どもの教育などを考え、生活費として計画的に財産を残していきたい場合に有効な方法です。
「併用型」は、文字通り、上記ふたつを併用することができる方法。残されている金額にもよりますが、葬儀費用もその後の生活費も、十分に計画した形で残せるので、よく相談してから選択すると大きな効果が得られます。
遺言信託とは遺言自体を信託するもの
ちなみに、名前が近いために混同されがちな制度に、「遺言信託」というものがありますが、こちらは遺言とその執行者を信託会社に委ねる制度のこと。財産の信託とは無関係なまったくの別物です。遺言代用信託は、遺言の代わりに財産を管理する信託ですが、遺言信託とは、遺言自体を信託するものです。
信託銀行に依頼し、相談したうえで公正証書遺言を作成。遺言書の保管や定期的な内容の見直し、照会なども、信託銀行が行ってくれます。遺言書作成から時間がたてば被相続人の状況も変わるため、それに合わせて内容に問題がないか、確認を受けることが可能です。
契約者の死後には、遺言執行者の選任や財産管理に関する助言も受けられます。相続人間でトラブルが起きた場合などは信託者が執行できなくなりますが、基本的に、遺言書に関わること全般を任せられるのです。