遺言書の書き方が悪いと遺産分割協議を招く危険
せっかく遺言書を作っても細かなところまで書かなければ、遺産分割協議をせざるを得ない状況を招くケースもあります。詳しく書けばよかった…と後悔が先に立つ、思い込みで書いた遺言書の事例を見ていきましょう。佳織さんは現在45歳。15年前に結婚し、家庭を持って暮らしています。
遺言書を作ったと父から聞いていた
母はすでに亡くなっており、実家では高齢の父がひとりで暮らしていました。佳織さんはこまめに連絡を取ってはいたものの、実家に帰るのは年に数回ほどでした。妹もいるのですが、佳織さんと同じような生活で、実家に帰ったタイミングくらいでしか顔を合わせる機会もなかったのです。
そんなある日、定期的に父の家に様子を見に行ってもらっていたヘルパーの方から佳織さんへ、父が倒れて緊急搬送されたと連絡が入りました。急いで病院に駆けつけたものの、残念ながらすでに父は亡くなっていました。佳織さんは悲しみに暮れながら、遅れてきた妹と共にその後の手続きを行いました。
葬儀が一段落すると、次に待っていたのは「空いてしまう実家をどうするか」「財産はどう分けるのか」といった問題です。しかし、母が亡くなったすぐあとに遺言書を作ったと父から聞いていたため、父の部屋を捜索し、みつけた遺言書をもとに相続の相談を始めました。
相続登記をすると自宅にはローンが…
遺言書によると、自宅と預貯金の半分は妹に、残りは佳織さんに、もし新たな財産がみつかったときはそれも佳織さんに相続させるとのことでした。妹は、手間がかかるけれど、自宅は売却すれば利益が得られるから、ありがたいと考えています。
一方の佳織さんは、煩わしい不動産の手続きはしたくないし、なにか新しい財産が出てきたときにはそれももらえるからと、その内容に合意。ふたりとも納得して相続を始めました。
しかし、いざ相続登記をしてみたところ、自宅にはローンが残っていることが発覚。数年前に行ったリフォーム費用の返済が終わっていなかったのです。妹は、ローンについては遺言書に書かれていなかったのだから、佳織さんが相続するべきだと主張。佳織さんは、家を相続するのは妹なのだからローンも妹が相続するべきだと反論しました。
結局、これでは押し付け合いになり解決できないということで、遺言書はナシにしてふたりで遺産分割協議を開始することに。最終的にローンは折半になりましたが、話し合いは紛糾し、姉妹の仲は悪化してしまったのです。