遺言書を残す目的はトラブル回避だけではない
遺言書の目的はトラブル回避だけではありません。そもそも本来は、被相続人が自分の意思を残すために作成するのが遺言書。自分の財産を望んだかたちで残すことができるように作成するものです。メリットは多岐にわたります。被相続人にとって希望を叶えるという意味でプラスになるのはもちろん、相続人にとっても、作っておいた方がいいものです。その利点を詳しくみていきましょう。
遺言書で財産を残さないように指定
まず、先ほど書いたように、被相続人にとって遺言書は、自分の財産をどう残すかという希望を伝える唯一の手段です。希望というのは、単に相続人の間での分割の割合だけではありません。
たとえば、本来は法定相続人ではない人、内縁の妻などに対しても、財産を残してあげることができるのです。また、反対に財産を残したくない相続人がいた場合、その人物に財産を残さないように指定することもできます。
相続権を剥奪していない限り遺留分は請求されるかもしれませんが、取得を最小限にとどめることは可能です。
一方、相続人にとってのメリットは、なにより相続財産の分割が簡単でスムーズになるということがあります。大金が関わる場合も多く、紛糾しがちな遺産分割協議が遺言書一枚でスムーズにまとまるのです。
遺言書は相続財産を洗う手間を省く
また、遺言書を残している被相続人は、遺産目録もセットで作成している可能性が高く、これがあれば、相続財産をゼロから洗い出す手間を省くことができます。
一部の財産の存在を知らず、あとから分割協議をやり直す羽目になったり、急に債務を突きつけられて慌てるような心配も減るのです。
もし遺言書が残されていなかったら、最悪の場合、兄弟姉妹間でもめ事になり、家事審判とはいえ裁判所のお世話になることすらありえます。また、債務の存在を知らなかったために相続人が遺産を使ってしまい、払いきれない高額の債務を抱えてしまうこともあります。
そのようなトラブルを回避するためにも、遺言書は残しておくべきなのです。