遺言書の開封は家裁で相続人の立会いの元で行う
遺品整理で思いがけない場所から遺言書が出てくることがありますが、遺言書は勝手に開封してはいけません。薫さんの家庭は二世帯住宅。彼女は夫と娘と一緒に、両親と世帯を分けて暮らしています。遺言書を勝手に開封したことで過料5万円を支払うことになってしまった事例を見ていきましょう。
母が遺言書をみつけそのまま開封
薫さんは夫や娘との仲もよく、薫さん夫婦が共働きだったこと、両親が共に元気だったこともあって、娘の世話を両親に頼んだりしつつ生活していました。しかし、元気だった父が突然の病に倒れ、病院に緊急搬送されてしまったのです。
薫さんと母は毎日のように病院に行って世話をしていたのですが、病は重く、医師の見立てでは数日が山だろうということでした。
薫さんたちは遺言書があるかどうか聞けずにいたのですが、父は自ら死期を察したのか「書斎の棚のなかに遺言書を残してある。俺が死んだらそれを開けて、その通りに財産を処分してくれ」と告げたのです。
薫さんと母は、それを泣きながら聞くことしかできませんでした。そしてその日の夜、父は昏睡状態に陥り、そのまま帰らぬ人となったのです。
自宅に戻った薫さんは、知人の連絡先を調べたりと、葬儀の準備をはじめていたのですが、その間に母は、父の書斎から遺言書をみつけ、そのまま開封して中身を読んでしまったのです。
遺言書の開封を家庭裁判所に相談
薫さんは以前「遺言書は勝手に開けてはいけない」という話を聞いたことがあったので大慌て。それを聞いてことの重さを理解した母も動揺していたのですが、とにかく詳しい人に聞くしかないと家庭裁判所に相談にいきました。
弁護士にいわれたのは、過料5万円を支払って、正しい検認を受けなければならないということ。5万円という費用はかかるものの、遺言書が無効になってしまうのではないかという薫さんの懸念は払拭されました。そこで薫さんは手続きの方法を確認し、改めて検認を行うことにしたのです。
遺言書の内容は、父の権利になっていた自宅の半分を娘である薫さんに譲り、預貯金は生活費として母に相続させるというものでした。さらに、家族への感謝や薫さんたちにこれからも母を支えて欲しいという願いも書かれていました。
その後、相続自体は滞りなく進み、無事に終了。遺言書を開封しているのをみつけたときは、無効になってしまうのではと不安で一杯になりましたが、5万円の負担で済んだことで、薫さんも母もホッと胸をなで下ろしました。