遺言書が見つからないために起きたもめごと事例
故人が生前、遺言書の存在を口にしていたのにみつからない。遺言書がなければ遺産分けの内容が変わってしまうケースもあります。遺言書がみつからないために口約束がもめごとを招いた具体的な事例を見ていきましょう。最終的には、裁判所の調停を受けることになってしまいました。
ことあるごとに父親にお金を無心
「俺ももう長くはないが、死んだあとのことはなにも心配しなくていい。ちゃんと遺産については書いておくから」72歳でがんがみつかってからというもの、父は口癖のようにそんなことをいっていました。
母は若くして他界しており、父が亡くなると、残るのはゆかりさんと弟だけです。弟は金銭面にだらしないところがあり、家の購入や子どもの教育資金など、ことあるごとに父にお金を無心していました。
しかし、病気の父の世話もせず、年に数回帰省しては「元気そうだね」などと気楽に声をかけているばかりでした。そんな弟の態度を、ゆかりさんはあまりよく思っていなかったのです。
父親は遺言書を残すといっていた
こういったことがあり、ゆかりさんは、弟に警戒心を抱いていました。父が亡くなって相続の話になれば、「自宅をゆかりさんが、預貯金を自分が受け取るべき」と弟が主張してくると予想できたからです。これには父も同意見で、だからこそ遺言書を残すといっていたそうです。
ところが、実際に父が亡くなると、父の書斎を含め、家中を探してみても遺言書はみつかりません。家のなかをすべてひっくり返して探したのですが、それでもみつかりませんでした。公証役場にも、作成記録は残されていません。
相続が始まると、弟は預貯金だけでなく、自宅の方が評価額が高いからと不足分を補う金銭まで請求してきました。ゆかりさんは「父の老後の世話をしていたのは自分なのだから」とこれを拒否。結局、話はまとまらず、裁判所の調停を受けることになってしまったのです。