民法改正の大きな変更点「配偶者居住権」とは?
民法改正で、もっとも大きな変更点ともいえるのが配偶者の居住権です。相続財産として自宅が残されたとき、新たに配偶者に居住権が与えられることになりました。これは所有権とは別の権利となったため、ほかの相続人が不動産を相続しても配偶者は住み続けることができるようになるのです。
配偶者居住権はリスクから配偶者を守る
従来は、被相続人所有の住宅に同居していた配偶者であっても、建物を相続しない限り居住が保障されることはありませんでした。遺産分割のために売却せざるを得なかったり、相続人から立ち退きを迫られることさえあったのです。つまり、そこに居住する法的根拠を得るためには、自宅を相続することが不可欠だったのです。
ところが、配偶者の法定相続分は相続財産の半分に過ぎません。不動産を取得すると、ほかに相続できる遺産は大きく減少します。
もし住居の評価額が法定相続分を超えれば、ほかの相続人の相続分を補填しなければならなくなり、生活に影響がでてしまうケースが少なくありませんでした。配偶者居住権はこういったリスクから配偶者を守ってくれます。
住居の権利が配偶者居住権と所有権に分離
もちろん、配偶者居住権の制度によって配偶者以外の相続人が損をすることはありません。配偶者が得るのはあくまで居住権だけ。不動産の所有権は別個の相続資産になるからです。
住居の権利が配偶者居住権と所有権に分かれ、別々に相続できるように変わったのです。また、居住権を相続した配偶者が亡くなれば権利は喪失すると考えられています。
なお、遺言書や遺産分割協議の結果、もし住居に関して配偶者の相続分がなくなった場合でも、短期居住権が与えられます。これは基本的に最低6カ月間はそれまでの住居に継続居住できる権利で、相続資産として評価されることはありません。
このように配偶者居住権によて、相続が発生したことで配偶者が突然住む場所を失ってしまうような状況はなくなることになります。この制度は2020年4月1日までの施行が予定されているので、関係がありそうな人は確認しておくと安心でしょう。