雑損控除と災害減免法は所得税が戻ってくる制度
災害や犯罪の被害に対して予防の方法がないわけではありませんが、基本的に被災者や被害者が事前に回避するのは困難でしょう。大規模な災害に対しては、被災者生活再建支援制度を始めとしたさまざまな支援が用意されているのですが、犯罪の被害者まで考えると、かならずしもこれで十分とはいいきれません。
雑損控除は損失額で所得税額を控除
少しでも彼らにかかる負担を減らすための制度として、雑損控除や災害減免法があります。これは災害被災者や犯罪被害者に対して支払われる給付ではなく、損失額に応じて所得税額を控除するというもの。それぞれ基準額や対象となる被害の基準なども異なります。
まず雑損控除について解説します。これは、自然災害に限らず、盗難や横領など特定の犯罪による被害でも適用されます。ただし、詐欺などは含まれないのでその点は要注意です。また、控除の対象となる資産は住宅だけでなく、現金や家具、衣類など、生活必需品であるすべての財産が含まれます。
雑損控除の計算法は、差し引き損失額から総所得額の10%を引いた金額か、災害関連のやむを得ない支出金額から5万円を引いた金額の、どちらか多い方が適用されます。なおここにある差引損失額は、損害金額と災害のために支払ったやむを得ない支出の合計から、保険金などによる補填を差し引いた金額です。
この雑損控除が所得よりも大きく、1年分では控除枠が余ってしまう場合には、最大3年間にわたって余剰分を持ち越して控除を受けられます。
雑損控除は所得による制限がない
雑損控除で損害金額の基準となるのは、被害を受けた時点でのその資産の価額。たとえば災害によって家屋が被害を受けたときは、その物件の時価と築年数に応じた減価償却分を合わせて計算します。
また、被害を受けた財産の撤去などを行う場合、その費用はやむを得ない支出として判断されるため、控除の対象になります。ただし、その資産を丸ごと買い替えたりするような場合の費用などは、これに含まれません。
雑損控除の制度では申請者の所得による制限は設けられておらず、特定の種類の財産に被害を受けていれば誰でも申請することができます。
また、被害を受けた年の所得が1000万円以下だった場合には、災害減免法による所得税の軽減免除という制度を受けることも可能。人によってはそちらの方が控除額が大きくなる可能性があります。ただし、これらは併用することができないので、それぞれ控除額がいくらくらいになるのかは確認が必要になります。
雑損控除と災害減免法は確定申告
災害減免法による所得税の減額とは、火災や自然災害による被害に応じて、所得税額を減算してくれる制度のこと。対象となるのは住宅や家財道具などで、損害が時価の50%以上だと判断されれば受けることができます。ただし、この制度は盗難などによる被害は対象外。あくまで災害による被害への支援です。
雑損控除と違って所得による制限があり、1000万円を超えていれば受けられません。また、所得税の減額割合も上の表のように所得に応じて変わります。所得金額が低い人ほど、この制度による恩恵を受けやすくなっています。
なお、雑損控除と災害減免法の制度に関しては個別に手続きを行う必要はありません。あくまで控除のひとつなので、毎年2月16日から3月15日までに行う所得税の申告の際に、規定の確定申告書を記入して、必要書類と一緒に提出するだけです。
必要書類とは源泉徴収票や、やむを得ない支出の金額がわかる領収書など。確定申告の際には各種控除を受けることができるので、それに合わせて書類を用意しておきましょう。