パッシブデザインとアクティブシステムとの違い
住まいの省エネ性能を高めるためには、自然エネルギーの活用も見逃せません。機械設備を用いて自然エネルギーを生活に用いる仕組みを「アクティブシステム」といいます。その代表といえるのが「太陽光発電」や「太陽熱利用」でしょう。パッシブデザインとアクティブシステムとの違いを見ていきます。
アクティブシステムには装置が必要
太陽の光を電気に変える太陽光発電は、二酸化炭素を排出せずに電気が作れるため、クリーンで電気代も削減できます。電力会社と契約すれば、余った電気を売ることも可能。ただし、導入コストは安くはなく、元手を回収するのに10年ほどかかってしまいます。
一方、屋根に載せた集熱器で太陽熱を集め、部屋を暖めたりお湯を沸かせたりするのが、太陽熱利用です。暖房と給湯は家庭のエネルギー利用の50%以上を占めているため、これを活用すれば、より効率的にエネルギー消費を削減できるといわれています。また、導入コストも太陽光発電よりお手頃です。
そのほかにも「エコキュート」や「エネファーム」とよばれるアクティブシステムがあります。エコキュートは空気の熱を利用してお湯を沸かす装置で、消費エネルギーの3倍以上の熱が生み出せるもの。
エネファームは、ガスから水素を取り出し、空気中の素と化学反応を起こして電気をつくる仕組みです。導入コストは高めですが、電気を発生させる過程で生じた熱でお湯もつくるので、非常に効率がよいのが特徴です。
パッシブデザインは建築的な工夫だけ
アクティブシステムには装置が必要ですが、建築的な工夫だけで自然エネルギーを利用する「パッシブデザイン」も省エネルギーには有効です。「パッシブ」とは「受動性の、受け身な」という意味で、ストーブやエアコンのように電気で温度を調節するのではなく、自然の力で空間を快適に保つ方法をいいます。
具体的な設計手法はさまざまですが、代表的なのは「集熱」「熱移動」「蓄熱」「排熱」「日射遮蔽」などのための設計です。
たとえば、太陽の高さは季節や時間帯によって変わりますが、軒の長さを調節すれば、夏の強い日差しを遮り、冬の日射を部屋の奥深くまで届けることができます(集熱・日射遮蔽)。
また、南の窓を大きくして天井や床に蓄熱効果が高い建材を使えば、熱を効率よくためることも可能です(蓄熱)。そうして昼間に吸収された熱は夜間に放出されるため、室温は一定に保たれます(排熱)。
さらに、北側の低い位置に窓をつくれば、そこから冷えた空気を積極的に取り込んで室温を下げられます(熱移動)。このような自然エネルギーの活用法は広く定着しつつあるので、間取りを考える際にはぜ考慮してみてください。