ハリー・ポッターと秘密の部屋のエルフとノーム
『ハリー・ポッターと秘密の部屋』ではドビーという「屋敷しもべ妖精」が登場します。耳慣れない言葉なので、作品オリジナルの妖精だと思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、原文を見ると、屋敷しもべ妖精は、houseelf(または単にelf)と表記されています。屋敷しもべ妖精とは、エルフだったのです。
ハリーポッターと秘密の部屋のエルフ
エルフという日本でも定着した言葉があるのに、あえて創作した言葉を当てる必要があったかという疑問もあるところです。しかし、日本ではエルフというと、すでに固定化した、美しい姿をした妖精のイメージがあります。
北欧神話には、ドワーフに似た闇のエルフ・黒いエルフと呼ばれる醜い姿をしたエルフも存在しますが、あまり一般的ではありません。一般的に日本でエルフといったら、北欧神話の光のエルフ・白のエルフを指すと考えて良いでしょう。
これに対して『ハリー・ポッターと秘密の部屋』に登場するのは「コウモリのような長い耳をして、テニスボールくらいの緑の目がギョロリと飛び出した小さな生き物」で、「手と足がでるように裂け目がある古い枕カバーのようなものを着ている」存在です【第2章】。
両者にはかなりのギャップがあります。おそらく、翻訳者としては、既存のエルフに対するイメージと作中のhouse-elfとのイメージのズレが、誤解や混乱を生じさせることを避けようとしたのだと思われます。
ハリーポッターと秘密の部屋のノーム
屋敷しもべ妖精と同様に、庭小人というのもあまり聞いたことがない言葉です。こちらは、原文ではノーム(Gnomu)です。ノームは、穴ぐらを住処にして財宝を守っているなどと言い伝えられています。エルフほど有名ではないかもしれませんが、ファンタジー小説などが好きな人であれば、知っている名前だと思います。
ノームは『ハリー・ポッターと秘密の部屋』では完全に庭の害獣といった扱いです。ノームを知っている人であれば、イメージのギャップがありますし、知らない人にはノームといっただけではイメージが湧きません。そこで、翻訳の段階で庭小人という訳語が当てられたのでしょう。
ちなみに、ロンの「マグルの家にも飾り用の小人が置いてあるの、知ってるだろ」【第3章】というセリフにある置物とは、ガーデンノームというものです。これのことを日本語で庭小人と呼ぶことがあります。
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