幼虫移行症は寄生虫が体内をうろついている状態
犬猫の回虫や豚の回虫などの幼虫が人に寄生することがあります。この原因となるのが、これら回虫の幼虫を宿した肉なのです。寄生虫は結構、好き嫌いが激しく、この動物じゃないと成虫にならないとか、この動物の中でだけ幼虫の次のステージに進めるとか、実に面倒な生き方をしています。
幼虫のまま体内をうろうろと動き回る
動物の回虫は、本来の宿主(例えば豚回虫なら豚)の中では腸管内で成虫になって卵を産むようになります。しかし、別の種類の動物に感染してしまうと、腸管に行かず、幼虫のまま体内をうろうろと動き回ります。
他の内臓に行ってみたり、もし脳や目に行ってしまうと宿主は立てなくなったり、失明したり、大変なことになる場合もあります。ある程度、うろつくと諦めて筋肉の中に入って休眠します(回虫の種類によって好みの臓器や筋肉の部位も違ったりします)。
こうすれば、次に本当の宿主に食べられて成虫になるチャンスがあるかも知れませんからね。これをついうっかり人が生で食べると、幼虫はまた体内をうろつくことになるのです。
幼虫移行症は最近シカ肉の症例が多い
これが「幼虫移行症」と呼ばれる状態です。腸内の寄生虫は虫下しで簡単に落とせるのですが、臓器や筋肉に入り込んだ寄生虫を駆虫するのは、ちょっとやっかいです。
生きた寄生虫は、免疫系を上手く騙して仲間の振りをしていますが、死ぬと一気に嘘がバレ、よそ者として攻撃されることになります。入り込んだ場所によってはそこで寄生虫が死ぬことでさらに障害が出たりするのです。
この幼虫移行症は、牛肉・鶏肉(特に地鶏)を食べての症例が多いのですが、どうも最近シカ肉での症例が多いような気がするという話をしているお医者さんもいます。人里近くの野生動物は家畜やペットの回虫の幼虫を宿す確率が高いのかも知れません。
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