鹿肉に潜む危険のある寄生虫がトキソプラズマ
トキソプラズマは一般的に猫の糞、生焼けの豚肉が危ないと思われている寄生虫です。でも本当は、ほとんどの温血動物(哺乳類と鳥類)に感染する寄生虫ですので、鹿肉や猪肉も危ないのです。鹿肉に潜んでいる危険性のある寄生虫・トキソプラズマについて詳しく見ていきましょう。
寄生虫に特に注意する食品として鹿肉
アメリカ疾病予防センター(CDC)も寄生虫のトキソプラズマに特に注意する食品として、豚・羊・鹿肉を挙げています。妊娠中に初めて感染してしまうと、この寄生虫はお腹の赤ちゃんに影響し、流産や水頭症などを引き起こします。
エイズや抗がん剤治療などで免疫が落ちると新たに感染しやすくなるだけでなく、自覚症状もないまま体の中に眠っていた幼虫が目を覚まして暴れ出し、脳炎などを起こします。
昭和の中頃、国内でも家畜のトキソプラズマの感染状況と流通する肉の汚染が大々的にマスコミによって取り上げられたため、豚肉は生で食べない、牛であってもレバーはしっかり火を通すということが多くの家庭でも言われていたと思います。
寄生虫に関して鹿肉は生肉を食べない
ところが、昭和60年の厚生省(当時)の調査で、国内でトキソプラズマに感染した赤ちゃんが調査対象のうちわずか1人であったということから、トキソプラズマはもはや過去の病気だとされてしまいました。
妊娠期の検査も自費診療になってしまいました。その後、肉の生食が一般的になった頃から、お母さんのお腹の中でトキソプラズマに感染した赤ちゃんが報告されるようになります。
トキソプラズマは、国内から姿を消したわけでも過去の病気でもなかったのです。現在でも全国各地の食肉衛生検査所での調査でトキソプラズマ感染が疑われる豚が見つかりますし、沖縄の山羊などは結構感染しています。
地域によって差はありますが、国内の鹿や猪の調査でも、トキソプラズマにかかっている割合は低くはなさそうです。この寄生虫に関しては、鹿肉はもちろんどんな種類であれ生肉、生焼け肉を食べないよう妊婦さんは特に注意してください。
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