鹿肉のプロは熟成庫で徹底的に余分な水分を除去
鹿肉取扱いのポイントをお話しいただいたのは、和歌山県古座川町にある温泉宿ぼたん荘の料理長である深海政也さん。古座川の鹿肉「清流鹿 金もみじ」を初めとした地元で採れた海山川の恵みを振舞う。宿に隣接する古座川町鳥獣食肉処理加工施設では、自ら鹿の処理、解体を行い、古座川町のジビエ振興を担う。
鹿肉は熟成庫で余分な水分を飛ばす
一次処理が終われば、熟成庫で0~3度ぐらいの状態で数日寝かせます。その間に、鹿肉の内部ではタンパク質がアミノ酸に変わり旨味が増すとともに、残った血液を落とし、余分な水分を飛ばすことで、鹿肉がギュッと締まります。
この余分な水分がいわゆる「臭み」の元になるので、ヒレ肉部分に沿ってナイフで切れ込みを入れておいたりして、少しでも血を落とし、水分を飛ばします。
鹿肉としての「個性」に当たる部分もあるのでは?というご意見もいただきますが、この施設では「臭み」の元は徹底的に取り除いて肉にし、食べた方には「旨味」だけを知っていただきます。
鹿肉を冷凍するときは素早く低温に
鹿肉は綺麗にトリミングをします。それぞれの鹿肉の塊は小さくなってしまうかも知れませんが、部位ごとの味や肉質の違いを楽しんでほしいからです。その分、端肉が出ますが、これも処分せずにミンチなどにして利用しています。
部位ごとに切り分けてトリミングすると深い赤味を帯びた肉になります。部位ごとの違いを楽しむだけでなく、1つ1つの肉を小さくすることで、均一に冷凍することができ、鹿肉を料理に使う際も少量ずつ解凍して使うことができます。
肉にした後は真空パックにして、マイナス30度のアルコール冷凍機で急冷凍します。ゆっくり冷凍すると、いわゆる「ドリップ」が大量に出ることになり、やはり臭みも出ますし、旨味も抜けてしまいます。冷凍するときは素早く低温にすることが非常に大切です。
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