鹿肉や猪肉には寄生虫が潜んでいる可能性がある
猟師の皆さんが昔から食べていた鹿肉や猪肉が、最近は「ジビエ」という小こじゃれ洒落た名前で呼ばれるようになって来ました。増え過ぎた鹿や猪を有効活用するために、全国各地の自治体でもジビエを推進しようとしています。鹿肉や猪肉には寄生虫は潜んでいないのでしょうか?
鹿肉の中に寄生虫が潜んでいる?
お役所が介入して食品として流通させるならば、安全性に気を配らないといけません。知事推薦のジビエで食中毒が起きてからでは遅いのです。ということで、各自治体・厚生労働省などはジビエを衛生的に取り扱うための指針(ガイドライン)を出しています。
これは、主に捕獲時に鹿や猪の内臓を傷つけないことや、その後も衛生的に皮を剥ぎ、内臓を抜き、体の表面や腸管の中にいる食中毒菌が肉に付着しないよう、増えないようにするためのものです。
しかし、いくら衛生的に取り扱っても、そもそも鹿肉や猪肉の中に寄生虫が潜んでいたら、どうでしょうか?
終戦直後の日本は寄生虫天国だった
「今の日本に寄生虫なんているの?」と思われるかも知れません。でも、日本から寄生虫が急激に減ったのは、第二次世界大戦後の話です。終戦直後の日本は、欧米から「寄生虫天国(Paradise of Parasites)」と呼ばれるほどでした。
今から70年ほど前のことです。その後、国を挙げての撲滅対策により、日本から人の寄生虫である回虫や鉤虫、鞭虫が急速に姿を消していきました。その中で、寄生虫はもはや過去のものとされていきました。
昭和の中頃までに生まれた方なら、寄生虫天国時代を知る親世代、祖父母世代から様々な寄生虫の話を聞いたことがあったかも知れません。しかし、今や小学校での検便も蟯虫検査もありません。
寄生虫なんて過去のものという認識
寄生虫を見たことのあるお医者さんもどんどん減っています。「寄生虫なんて過去のもの」、そんな認識が広がる中、肉の生食が一般的になり、普通の焼肉屋でユッケやレバ刺しが提供されるようになっていきました。
衛生状態の悪かった頃の日本では、子供や妊婦、高齢者には、生ものを食べさせないよう気を配っていました。体力・免疫力が十分ではないので、病気にかかりやすいこと、病気になればひどくなりやすいことを経験的に知っていたのでしょう。
かつて、レバ刺しなどはガード下の焼肉屋で「オジさま」たちが食べるものでした。「オジさま」たちは体力があり妊娠もしないので、レバ刺しを食べたところで、病気になることも、なったとしても重症化することはほとんどなかったと思われます。
鹿肉で病気になる人はごくわずか
それが、小学生がレバ刺しを食べるような時代になり、死者を出すほどの細菌性食中毒の発生によって牛や豚肉の生食や生レバーの提供には法的な規制がかかるようになりました。
「それならば」ということで、規制のないジビエを生で提供しようとしている飲食店もあるような話を聞きます。でも、ちょっと待ってください。牛や豚は家畜として飼われ、食肉検査を受け、肉になります。
それでも食中毒の原因となることがあるのです。ましてや、どこで生まれ、何を食べて来たかまったく分からない野生の鹿肉や猪肉を生で食べる? 大丈夫なのでしょうか?
正直に言うと、ほとんどの人は大丈夫です。病気になる人はごくわずかです。でも「当たる」可能性は常にあるのです。そして当たる確率は、子供・妊婦・高齢者など免疫力の弱い人ほど高くなります。
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